内容説明
晴れて人間となり、学問を修めて老境を迎えたピノッキオが、故郷ヴェネツィアでまたしても巻き起こす大騒動!原作のオールスター・キャストでポストモダン文学の巨人が放つ、諧謔と知的刺激に満ち満ちた傑作長篇パロディ小説。
著者等紹介
クーヴァー,ロバート[クーヴァー,ロバート][Coover,Robert]
1932年生まれ。トマス・ピンチョン、ジョン・バース、ドナルド・バーセルミらと並び称される、アメリカのポストモダン文学を代表する小説家
斎藤兆史[サイトウヨシフミ]
1958年生まれ。イギリス文学者、東京大学教授
上岡伸雄[カミオカノブオ]
1958年生まれ。アメリカ文学者、学習院大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マリカ
39
トーマス・マンの「ヴェニスに死す」をベースにしたコローディの「ピノッキオの冒険」の後日譚。美術史研究家として名をなした100歳のピノッキオが自伝の最終章を書くためにイタリアに帰ってきて、かつての友達や敵に再会し、真の「私性(I-ness)」に還るお話。クーヴァー流の手厳しいブラックユーモア満載で、老いて壊れていく可哀そうなピノッキオに同情しつつも、ケタケタ笑ってしまった。とにかく訳ががすごくて、クーヴァー一流のパロディのテクニックと、超絶技巧な言葉遊びが、言語の壁を越えて流れ込んできた。2012/11/22
三柴ゆよし
23
齢百何歳を迎え、功成り名を遂げた老ピノッキオ先生が、自らの人生を顧み、畢生の大作をものするために、故郷ヴェネツィアに帰還するというパロディ作品。ピノッキオが蒙る受難の数々はかなりの部分、原作に忠実であるほか、青髪の妖精との関係を性的なそれとして再構築したり、伸びる鼻を男性器の隠喩としてフロイト流に解釈したりするあたりは実にクーヴァーらしい作品で、にやにやしながら読んだ。とはいえ作中でいやというほど披露されるイタリア語交じりの言語遊戯に関してはついていけないところも多く、とことんまで楽しめたとは言いがたい。2013/01/08
兎乃
23
スッゴク面白かったです。詳しい感想はブログに書いたのですが、このハチャメチャぶりは、コローディを(できれば挿画はムッシーノで)お読み頂いてから...と思います。ディズニーのピノキオのイメージで読まれるとゲッ?ってなるかもしれません。いずれにせよ、トマス・ピンチョン、ジョン・バース、ドナルド・バーセルミらと並び称されるロバート・クーヴァーの素晴らしくも深いパロディ小説。泣いたり笑ったり、とっても忙しい読書タイムでした。2012/11/04
rinakko
13
いやはや面白楽しかった! よもやここまで破茶滅茶とは思うめえ…。『ピノッキオの冒険』から読んだ甲斐があったというもの。始め、相当に長いインターバルを置いた続篇と受けとめていたが、実際はもっと企みの深いパロディに徹していて、可笑しいの可笑しくないのって。それに、あのやんちゃな木の少年がこんな老人になろうとは…と、少しく哀感の漂うあたり、絶妙な匙加減だった。著名なる名誉教授で美術史学者、世紀の大人物…。自分は本当に幸せだったのだろうかと、人生を振り返る老ピノッキオ。猥雑で皮肉で切実で、最後は泣き笑いだった。2012/09/28
井戸端アンジェリか
12
三年焦がれてついにゲットできたワーイワーイ♪ と思ったらピノキオの鼻がペニスだった。どこを開いてもエロ爺のジョーク並みの下ネタ全開。下ネタは好きなんだけどさ、このシモはあんまり面白くないんだよね。偉人も哲学者も宗教も馬鹿だクソだになってて、どこで笑えばいいのか逆にうーん....。 あっ、ウォルト・ディズニーと親友とかゼペット爺さんのロクデナシぶりには少ーし笑えたかな。 一目惚れして三年掛けて口説いてみたら中身がクソ野郎でガッカリだよ、って感じ。2015/03/23