内容説明
姉妹のように育った女主人には双子が産まれ、愛する男との結婚も間近。貧しくもささやかな充足に包まれて日々を暮らす彼女に訪れた、運命のとき。全米注目のハイチ系気鋭女性作家による傑作長篇。米国図書賞受賞作。
著者等紹介
ダンティカ,エドウィージ[ダンティカ,エドウィージ][Danticat,Edwidge]
1969年ハイチ生まれ。12歳のときニューヨークへ移住、ブルックリンのハイチ系アメリカ人コミュニティに暮らす。バーナード女子大学卒業、ブラウン大学大学院修了。94年、修士論文として書いた小説『息吹、まなざし、記憶』(Breath,Eyes,Memory,Random House)でデビュー。少女時代の記憶に光を当てながら、歴史に翻弄されるハイチの人びとの暮らしや、苛酷な条件のもとで生き抜く女たちの心理を、リリカルで静謐な文体で描き出し、デビュー当時から大きな注目を集める
佐川愛子[サガワアイコ]
1948年生まれ。女子栄養大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
87
ダンティカ3冊目。1937年、ドミニカ共和国陸軍が約2万人のハイチ人を殺害した「パセリの虐殺」を題材にしたフィクション。ハイチ(旧宗主国フランス)とドミニカ(旧宗主国スペイン)を分断するダハボン川は別名「虐殺の川」と呼ばれ、国境を越えて逃げるハイチ人が殺された。物語はドミニカで軍人の奥さま付きの女中として働くハイチ人のアマベルが虐殺の場から隣国に逃れ、その後生き別れた恋人のセバスチャンを探しにドミニカを訪れるまでを描く。→2021/03/25
凛
13
1937年にドミニカ共和国で起こったハイチ人虐殺事件。1日で2~3万人が殺されたとも。リョサの『チボの狂宴』がドミニカ視点で書いているようだが、こちらはハイチ人の一農民視点。片田舎の村でメイドとして平穏に過ごしていた主人公を急襲する虐殺。私自身この事件を全く知らなかったので、確かな状況が判らず情報に翻弄される弱者の彼女の気持ちが良く分かる。文体は単純だけど独特な、甘い水のような匂いを感じた。しばらくはパセリ見ると暴力がフラッシュバックしそう。訳者は原題の意味を完全に理解しているのに、これにしたのには不満。2014/01/07
今日もおひさま
5
現代においても小説家の才能は文学より軽いのか? 歴史の勝者が書き上げてきた裏側にある本質や私的な物語というモチーフを文学は好きだ。 「トルヒーヨ時代のドミニカ共和国におけるハイチ移民労働者の掃除的虐殺」「骨狩りというタイトル」等の予備知識から本作を重い作品だと思っていたが、読み終わってみれば小説家としての才能が目立ち、文学的には軽くじられた。 パセリ、サトウキビ、骨、モチーフの印象の強さが良いし、国民主義や移民問題としても読める https://todayisalso-stroll.com/?p=53222025/03/10
rabbitrun
4
ドミニカとハイチの国境を流れる川で起きた虐殺を題材にしているので手にするのを躊躇したが、無事読了した。事件を生き延びた女性の一人称で出来事が淡々と語られるため生々しい描写は少なかったが、それでも行間に不穏な空気が漂って戦慄を覚えた。祖国の史実、犠牲者の魂と向き合った著者の想いは相当なものだったろう。2021/12/31
hrn
3
『オスカー・ワオ』といい『チボの狂演』といいい、今年はドミニカを舞台にした本を、そしてトルヒーヨの本を2冊読んだけれど、その中ではいつもハイチの人は労働者として存在し、弱者であり邪魔な他所者なわけだが、これはその弱者(しかも女性の)からの視点であり、また先に読んだ2冊が違って見えて面白い。そして女性作家らしい朝露に濡れたような詩的な文章もまたいい。ドミニカで女中として平穏に暮らしているハイチ人女性のアマベル。彼女に降りかかる虐殺の日。アマベルの見る夢の甘さに涙した。川とパセリの物語。2012/06/06
-
- 和書
- 色づく季節と隣のキミと