内容説明
獄中から死の直前まで書き継いだ畢生の小説。革命と夢が公叉する狂騒の八〇年代の青春群像。
著者等紹介
見沢知廉[ミサワチレン]
1959年東京生まれ。中央大学法学部除籍。16歳より新左翼に参加し、成田管制塔事件などを闘う。80年より新右翼活動に入る。82年火炎瓶焼き討ち事件等に連座、12年の刑を受け、千葉刑務所に入所。94年、出所直前に「天皇ごっこ」で新日本文学賞佳作。2005年9月7日逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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半木 糺
5
「右翼にゃ、そんなもんねえよ」 「じゃあ、なにがあるの?」 冒頭のこのやり取りが、すべてを物語っているように思える。あらゆる「思想」が軽くなりフラット化した現代。思想なぞなくても生きていける人間が大半だが、それでも思想を、闘いを欲する人びとがどんな時代にも一定数いることもまた事実である。 三島と森田に置いていかれ、大きな大きな十字架を背負わされた小堺。しかし、もはや倒すべき「敵」などどこにもいない。小堺のモデルは鈴木邦男なのだろうが、案外彼の精神の根底を表した文章なのかもしれない。2011/11/07
hikarunoir
3
獄中以外の部分で抱かれ、公言もしている自己像を有機的に繋げ長編化した感触で、かつ文体も軽快で新境地だけに夭折が惜しまれる。2015/10/08
hiratax
2
没後2ヶ月以内の緊急刊行だが、見沢知廉の文章は悪筆で誰も読めないというエピソードを勘案すると、作業が進んでいて頓挫したのかなとも。あと見沢知廉の事務所でファン年賀状を送ったことがあり、生前親交があった人間と思われたのか「偲ぶ会」の招待状が届いたこともあった。会費が高くて行かなかったが、行っとけばよかったとも。お断りの返信に一筆添えたら、お母様から丁寧な礼状が届いたことも忘れられない。2005/11/03