出版社内容情報
『楚辞』の隠された魅力を引き出しその価値を再認識する試み。「信屈」「疑屈」に留まらずより広い視野から屈原の人物像を描く。『楚辞』は、中国詩歌文学の源流として『詩経』と並称される。その収録作品は伝統的に、戦国楚の屈原と結びつけて解釈されてきた。しかし「悲劇の忠臣屈原」の伝説に沿って読み、彼の偉業として称えるだけでは、『楚辞』の全体像をつかむことはできない。本書は、屈原伝説にとらわれずに作品と向き合い、一歩引いた視点から冷静に屈原伝説と『楚辞』との関係をとらえ直そうとするものである。先秦から後漢にかけて、複雑な形成過程を経て成立した作品群の集大成であることを考慮しつつ、『楚辞』に対する多方面からのアプローチを試みた。
第1部 楚辞「離騒」の天界遊行とその解釈をめぐって
第1章 「離騒」の天界遊行はどのように解釈されてきたか
第2章 シャーマニズム論から見た「離騒」の天界遊行解釈
第3章 楚辞「離騒」の天界遊行に見える「上下」について
第4章 楚辞「離騒」に見える「求策」についてー君臣遇合例を中心に
第5章 楚辞「離騒」の「求女」をめぐる一考察
第6章 楚辞「遠遊」と「大人賦」の天界遊行
第7章 『淮南子』に見える天界遊行表現について
第2部 悲劇の忠臣ー屈原像の形成ー
第8章 王逸『楚辞章句』以前の屈原評価
第9章 楚辞「卜居」における鄭?尹の台詞をめぐって
第10章 笑う教示者ー楚辞「漁夫」の解釈をめぐって
第11章 「無病の呻吟」?楚辞「七諫」以下の五作品について
第12章 孔子と屈原
終章
矢田 尚子[ヤタ ナオコ]
著・文・その他
内容説明
『楚辞』の隠された魅力を引き出し、その価値を再認識する―諸作品と屈原との多層的かつ複雑な関係をとらえ直し、「信屈」「疑屈」といった立場にとどまらない、より広い視野からの『楚辞』理解を目指す。
目次
第1部 楚辞「離騒」の天界遊行とその解釈をめぐって(「離騒」の天界遊行はどのように解釈されてきたか;シャーマニズム論から見た「離騒」の天界遊行解釈;楚辞「離騒」の天界遊行に見える「上下」について;楚辞「離騒」に見える「求索」について―君臣遇合例を中心に;楚辞「離騒」の「求女」をめぐる一考察 ほか)
第2部 悲劇の忠臣―屈原像の形成(王逸『楚辞章句』以前の屈原評価;楚辞「卜居」における劉〓尹の台詞をめぐって;笑う教示者―楚辞「漁父」の解釈をめぐって;「無病の呻吟」―楚辞「七諫」以下の五作品について;孔子と屈原)
著者等紹介
矢田尚子[ヤタナオコ]
1967年愛知県生まれ。東北大学大学院文学研究科博士課程後期三年の課程修了。博士(文学)。東北大学大学院文学研究科助教、盛岡大学文学部准教授、新潟大学人文社会・教育科学系(人文学部)教授を経て、東北大学大学院文学研究科准教授。専門は中国古典文学(先秦両漢文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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