内容説明
イオニア海の美しい浜辺に打ち捨てられた密輸船パナギオティス号やトラック島空襲で零戦とともに沈没した日本海軍の富士川丸、世界中の大型廃船が集められ「船の墓場」とも呼ばれるチッタゴン船舶解体場などインパクトあふれる世界の廃船が満載。廃墟はドイツ軍の巨大病院施設であったベーリッツ・サナトリウムや日本の産業遺産を代表する軍艦島など、その今と昔を比べながら歴史の往来が楽しめる。
目次
１ 世界の廃船（マヘノ号（オーストラリア）
シグナ号（オーストラリア）
ワールド・ディスカバラー号（ソロモン諸島） ほか）
２ 日本の廃墟（端島（軍艦島）（長崎県）
大久野島（広島県）
根岸競馬場一等観覧席跡（神奈川県） ほか）
３ 世界の廃墟（バナーマン城（アメリカ）
ボディ（アメリカ）
シティホール駅（アメリカ） ほか）
著者等紹介
水野久美［ミズノクミ］
フリーライター（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かりさ
78
栄光の果てに朽ちてゆく寂しさや切なさをまとった廃船や廃墟の美しさにとても魅了されます。侵食し錆つきその姿を失いつつも、跡形をそこはかとなく残す廃船。解体されることなく残されることになった船は朽ち果てるとともにまるでモニュメントのような様となり、やがて自然と融合してゆくのかしら。廃船の写真集が珍しく手に取りましたが、とても良かったです。やはり日本人として心を寄せてしまうのは、被弾沈没した神國丸や、魚雷攻撃で沈没した富士川丸。珊瑚に覆われ船内を魚が舞うシーンが美しい。他おなじみの廃墟も案内してくれています。2017/05/02
zero1
60
サビの塊になった船は美しい。座礁などで置き去りになった船たちと軍艦島（長崎、世界遺産）など廃墟を紹介した一冊。ザキントス島はジブリアニメ「紅の豚」のモデルとなった。内陸湖のアラル海は世界最悪の環境汚染で知られる。旧ソ連時代に綿花栽培のため大量に水を使用。水位が下がり塩害が発生。健康被害も深刻化。もうひとつ印象的なのがチッタゴン（バングラデシュ）の船舶解体場。人件費が安いこの地に引退した船が集まり作業が行われているが、環境汚染が酷く、死亡者も多く出ている。現在この地は外国人立ち入り禁止。まさに天国と地獄。2019/08/01
ぶんこ
54
これでもかと、朽ち果て放棄された廃船を見続けていると胸苦しくなってきます。透き通った湖の沈船には「え、えっ〜」となり、元は湖だった砂漠に取り残された漁船の数々、座礁した廃船の周りには多くのペンギンが集う。低賃金で劣悪な環境での大型船解体工場。きちんと解体した方が良いと単純に思っていましたが、果たしていい事なのか？おまけのような廃墟の数々では閉鎖されているニューヨークのシティーホール駅の美しさに息を飲む。そして1世紀の時を経ても当時のままの姿で残る南極のスコット隊小屋。この2箇所には行ってみたくなりました。2019/11/05
井月 奎（いづき けい）
38
朽ち果てる船、そこに見る美しさは次の秩序への期待なのでしょうか、それとも永久の眠りへの望郷なのでしょうか。 廃船に思いを馳せるとき、自らの心その奥深くを見ているのではないでしょうか。生まれる以前、その記憶に触れているのではないでしょうか。 海の底にいる船。命無き船と命の躍動する魚、蝦、蟹。交差する生と死は海のすべてを表す。海の端で。 全ての船がそう見えるわけではないですけれども、いくつかの廃船は静かにつぶやいているように見えます。「海を渡って、海に飲まれて、海にたたずんでいる。悪い気分ではないよ」と。 2017/06/21
なるみ（旧Narumi）
31
読友さんのレビューがきっかけで読んでみた一冊。世界の廃舟、日本の廃墟、世界の廃墟の3章立てで、廃船が全体の1/2ほどを占めていました。基本的には写真を眺めるタイプで、廃船は海の青さと廃船の色のコントラストが印象に残りました。廃墟は日本のものより世界の廃墟の方が、なんだか保存状態がよさそうに見えました。読めて満足です。2019/09/05
