内容説明
俺は手紙を届けにいく。父さんが昔、渡すことのできなかった大切な人への手紙を―…。高校3年生の小嶋十希は父を亡くし、工藤旭のもとを訪れた。彼はかつて父が恋をした相手であり、十希にとって道標となる絵を描いた、憧れの画家でもあった。しかし、旭は十希が息子だと知ると「帰れ」と拒絶してきて…。雪の降るころ、一通の手紙から始まる恋のはなし。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
那義乱丸
24
朝丘さんの文章が好き。比喩表現や情景描写にさらにこの本では画家の攻めが描いた絵の描写が心情に重ねられ、読んでて脳内に色が広がる。亡き父の高校時代の後輩であり、自分の大好きな絵を描いた画家・旭に惹かれる高校生の十希。旭に拒絶され「好き」という言葉を飲み込む十希の「旭、」の呼びかけが切なく胸に染み入る。十希の一人称ながら会話や絵から旭の心も伝わってくる。十希を想い、彼を必要としながらもそれに応えようとしないのは大人の配慮と十希の両親への想いとわかるのが切ない。終盤になって章タイトルの演出に気づきホロリと来た。2012/07/15
那義乱丸
20
『春恋』読んだので再読。再読してから読もうとフェア小冊子を積んでたのでちょうどよかった(笑)何度もホロリホロリしながら読んだ。読了後に章タイトルを拾いながら通して読んでジワリ。切なくももどかしい葛藤を重ねながらも一途に、でも謙虚さを失わずに旭に想いを届け続ける十起がいじらしかった。旭視点のペーパーは本編巻末に入れた方がよかったのではと思う。で、アキについて。『春恋』があったからこその旭への一言だとしみじみ。『秋色』ではここに至るまでの経緯と、できれば『春へ』ラストの続きのシーンも読みたい!2013/10/24
このん
19
作家買い。読むのに時間がかかってしょうがなかった。物語的には、十希の諦めてるのに諦めきれない気持ちと、先輩の息子だからと十希を拒否する旭の、グダグダした心の葛藤が切なかったり腹立たしかったりなんだけど…。十希の気持ちが分かり過ぎて…しんどいよねぇ、と思ってしまった。。朝丘さんの本は、年下がしっかりし過ぎている、一方で、年上がどうもイマイチ過ぎる。もう少し年相応の設定を望む。(3105)2012/09/17
りんご☆
14
読了2017/03/18
諏訪 聖
14
「春恋」読んで「秋色」読んで初読で「春へ」読了です。やっぱり朝丘さんの文体はかなり個性的だなぁと思いました。春恋も今作も片思いしてる重さや同性ということへの葛藤が詩的に描かれていてきゅうきゅうしながら読み終えました。しかし読みながらずっと十希のお父さんに魅力を感じてしまった。2013/11/18