内容説明
いかにして人形は人間となり、人間は人形となるのか?19世紀から20世紀のイギリス小説に登場する人形を分析することで、人間と非人間、生物と非生物の境界や関係を吟味し、人間を人間として扱うことの意味を問う。
目次
序章 人形はどこへ行った
第1章 人形を愛する―シャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア』人形ではなく人間として愛し愛されるまで
第2章 人形を埋める―チャールズ・ディケンズ『荒涼館』鏡/鑑としての人形
第3章 人形を罰する―ジョージ・エリオット『フロス河の水車場』少女がふるう暴力
第4章 人形に話す―フランシス・ホジソン・バーネット『小公女』人形エミリーの退場と女王セーラの入場
第5章 人形で遊ぶ―H.G.ウェルズ『トーノ・バンゲイ』ドールハウスを出て大海へ
第6章 人形を燃やす―D・H・ロレンス『息子と恋人』ポール/パウロと“犠牲”の終わり
終章 人形はどこへも行かない
著者等紹介
川崎明子[カワサキアキコ]
駒澤大学文学部英米文学科教授。2005年、東京大学大学院人文社会系研究科英語英米文学博士課程単位取得。2005年、University of Hull英文科博士課程修了(PhD)。同人誌『英国小説研究』(英宝社)編集幹事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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有智 麻耶
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本書は、19世紀から20世紀のイギリス小説に登場する人形を分析することで、主人公の子ども期における人形との関わりが、その後の展開にどのように影響しているかを明らかにした研究である。金森修『人形論』をもとにした、〈人間の人形化〉と〈人形の人間化〉が主たる分析視角として設定されているが、それらの観点は第5章以降になると後景に退いてしまう。このことが、〈人形〉という分析視角の説得力を損なうことになりはしないか。また、著者が実在の人形および人形文化に、どのような関心をもっているのか気になる。2023/05/14