内容説明
自律と他律の区別はいかに身に付くのか?哲学と科学の連続性から。教育目的として掲げられてきた自律概念をめぐる議論の状況を概観。自分自身で行為を決めることと他人に依存すること、また理性的であることと感性的(感情的)であることの区別の意味や、それを実現するはたらきかけを探究。人間諸科学の知見を踏まえて、自律と他律の関係性に対する新たな解釈を提案する。
目次
序章 自律を目指す教育の新たな理解へ
第1章 自分自身で行為を決めることと他人に依存すること
第2章 理性的であることと感性的であること
第3章 自律を目指す教育を理解するとはいかなることか
第4章 意図と理由の空間への参入
第5章 叱責が可能にするもの
終章 自然主義的な教育哲学研究の成果と展望
著者等紹介
宮川幸奈[ミヤガワユキナ]
1987年生まれ。熊本学園大学経済学部准教授。九州大学大学院人間環境学府教育システム専攻博士後期課程単位取得退学。博士(教育学)。専攻は教育哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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tkg
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自律と他律のパラドックスを、それを区別する過程の問題へと置き換えていくという筆者の主張が 科学的な知見を踏まえながら明快に分かりやすく記述されていた。2023/06/12
有智 麻耶
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本書は、①カントに始まる〈自律と他律のパラドックス〉を、両概念の分かちがたさに注目することで退けたうえで、②それにもかかわらず自律と他律が区別されているということから、この区別を被教育者がどのように理解するようになるかという問題を設定し、③具体的な事例として、意図と理由の空間への参入と、叱責の分析を行った研究である。叱責の分析は、たとえば小学校の教員が読んでも面白いのではないかと思う。なお、著者は自然主義的な哲学が依拠する科学的知見の妥当性が揺らいだ場合、哲学をやり直せばよいとする。2022/03/20