内容説明
亡霊が世界中にあらわれている―帝国医療の亡霊が。帝国主義時代以降、世界中に広まった近代医療の自明性を問う。既存研究を整理し、植民地での複雑な交渉過程を検討、フィールドワークによる知見をも加え、病気や医療をめぐる人類学を再構想する。
目次
第1章 グローバル化する近代医療―帝国医療を手がかりとして(世界的な感染の時代;フーコーの「統治性」を手がかりとして ほか)
第2章 土着の実践から民族医療へ―過剰化する近代医療(民族医療とは;帝国医療・人類学・民族医療 ほか)
第3章 帝国医療の実相を探る―マラヤのラターをめぐって(帝国医療のイメージ;マラヤの人びとをめぐる記述 ほか)
第4章 帝国医療の亡霊―サラワクのコンタクトゾーンから(先住民プナン;国立公園の動物を食べる ほか)
著者等紹介
奥野克巳[オクノカツミ]
1962年生まれ。桜美林大学国際学部助教授。1998年3月一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Mealla0v0
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帝国医療とは、単に西洋近代医療を植民地を含む外部へと輸出したものではない。そうではなく、植民地での医学的実践の成果が本国へと還流し医学そのものを組み替えるような運動として捉えるべきである。近代医療自体がノーマルなものとして受け取られ、それに基づき、それまでの医学に類する実践は分類され、あるものは排除され、あるものはその補完物として再構成される。そして、こうした帝国医療の実践は、植民地という制度が消滅した現在でも、新自由主義との連関の中で存在している。グローバル製薬会社などのように。2020/11/23