内容説明
ディケンズ研究の第一人者である訳者によってこれまで邦訳出版された全小説作品や寄稿集を修正・改訳したものに、全12巻からなる書簡集を加え、日本で初めての全集として刊行開始。第1回目の配本は、小説家として地歩を固める前後までの、友人知人や出版社・編集者、後に妻となるキャサリン・ホガースらとの交流を物語る1,061通を収める書簡集。
著者等紹介
田辺洋子[タナベヨウコ]
1955年広島県に生まれる(現在、広島経済大学教授)。1999年広島大学より博士(文学)号授与(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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のっち♬
115
長編初期三作の執筆時期まで。宛名が豊富化する様は好人物ぶりが伺えるし、作品同様文体に愛嬌が横溢。恋人との破局や借金肩代わりまで齎す手許不如意の父の扱いに悩む際もユーモアを交え、過密スケジュールぶりからもニ作同時連載をやる常人離れしたバイタリティが伺える。義妹急逝時は"遥かに近しい身内を喪う方がマシ"という文面が生々しい。無断による舞台化や出版業者相手の利益分配の諍いも印象的。相手の息子の「必ずしも正直者ではない」という反論も看過できない証言だが、著作権という概念にここまで切り込んだ作家は史上初めてだろう。2023/08/30
ロビン
19
2021年から刊行され始めた本邦初の『ディケンズ全集』(全30巻以上)の第1回配本で、12巻にも及ぶ書簡集の1冊目。横書きであることと、翻訳に癖があることが少し本書を読みにくくしている。一応全ページ目を通したが斜め読みした。のちに妻となるキャサリン・ホガースへの恋文、挿絵画家のジョージ・クルックシャンクとの打ち合わせの日時打診、編集者との連絡、友人たちとのディナーの約束など、現代で言えば他人のLINEを覗き見しているような感覚である。創作や思索についてはほとんど書かれておらず実際的な内容の手紙が多かった。2021/09/18