出版社内容情報
通信の秘密及びその前提となる通信の自由をめぐる現代的諸課題について,比較法的視点を交えながら解釈論的・立法論的考察を加える。
憲法21条2項後段に規定される通信の秘密をめぐる解釈論は,郵便や固定電話が通信の主役だったかつての時代に確立されたものが現在においても大筋において踏襲されているが,時代の変化に応じて通信が果たす役割も拡大し,各人における通信との関わりの度合いも変容している。花形的な表現の自由の背後で,通信の秘密は陰をひそめたまま,伝統的な解釈が適切に修正されない状況に取り残されているようにみえる。
本書は,議論の前提として表現の自由をはじめとした各基本権との関係を踏まえた「通信」の概念を明確化しつつ,「コモンキャリア」概念の再構成を行ったのち,送信防止措置,通信記録の保管,位置情報収集,新種の犯罪捜査等先進的論点を検討,さらには,公権力とともに通信の自由・秘密の保護を担う通信管理主体に焦点を当て,その範囲・法的責任について論じる。
序章 本書の基本的な問題意識
第1章 憲法21条2項後段の規定の趣旨
第2章 憲法上の「通信」と「表現」
第3章 コード及び機械的生成物をめぐる表現の自由・通信の自由
第4章 インターネット接続役務提供者の伝送行為を通じた表現の自由
第5章 「コモンキャリア」概念の再検討
第6章 迷惑メールと表現の自由・通信の自由
第7章 通信の秘密との関係におけるインターネット接続役務提供者による送信防止措置
第8章 通信の秘密との関係における通信記録の保管のあり方
第9章 通信の秘密との関係における通信用端末設備及びその内包する情報の不可侵性
第10章 通信の秘密との関係における携帯電話の位置情報の法的性質
第11章 通信の秘密との関係における通信傍受と通信記録の捜索との分水嶺
第12章 情報通信技術を用いた新種捜査の法的位置づけ
第13章 多様なインターネット上の役務提供者の通信管理主体性
第14章 通信管理主体の流通情報の取扱いに対する法的責任
海野敦史[ウミノアツシ]
著・文・その他