内容説明
「人に取られたくない」という独占欲が、愛のかたち―やわらかに耳を打つ、心を撫でられそうな篠崎サンの声。安心してよりかかれる気がするけど、どうしてそうやさしくするの?田辺聖子の恋愛小説。
著者等紹介
田辺聖子[タナベセイコ]
1928年、大阪府生まれ。樟蔭女子専門学校国文科卒業。同専門学校在学中に終戦を迎える。文芸同人「文藝首都」「大阪文学」に所属。1958年初の単行本『花狩』刊行。放送作家として活躍。1964年『感傷旅行(センチメンタル・ジャーニイ)』で第五〇回芥川賞受賞。1987年『花衣ぬぐやまつわる…わが愛の杉田久女』で第二六回女流文学賞受賞。1993年『ひねくれ一茶』で第二七回吉川英治文学賞受賞。1994年第四二回菊池寛賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
71
これは失恋小説とでも言うのでしょうか。レイ子の恋に切なさを感じてしまいます。3人の男性を好きになり、その恋は全然想いが違うものなんですよね。そして3人とも別々の形で別れることになるのに胸が痛みました。優も宏も篠崎サンもレイ子にとっては大切な人だったのだと思います。でも結局はこぼれ落ちるように離れてしまうのが切なくてたまりませんでした。特に大人の魅力を持つ篠崎サンに夢中になるあまり、大事な人の最期に気づくことができなかったのが悲しすぎます。でも、レイ子は恋を終えたことで大人に成長することができたのですね。2015/05/07
佐伯りょう
5
冒頭から、主人公の恋の行方が思いやられるような暗い書き出し。まだ大人になりそめぬ若いOLが、学生との恋、同僚との恋、年上のお金持ちとの恋(いずれも淡い)に敗れて大人になっていく物語。包容力も財産もある優しい中年男の「名前もろくに覚ていえない」女の子のあしらい方に、無関心の残酷さがリアルに描かれており、読んでいるこちらの胸まで痛くなった。そして、好きだった男の子の心中事件。田辺聖子作品は、ほんわかして甘い衣に包まれた苦い毒が潜んでいる。最初の1ページと最期の1ページで、主人公の精神世界のあり方がが変わってい2012/05/02
バーベナ
5
せつないっ。OLのレイ子の周りには同僚、年下の彼、ちょっと素敵な中年さん。みんな側にいたはずなのに・・・。薔薇風呂に喜ぶレイ子が、やがて大人になっていくまでの物語。なんて哀しくて優しい話なの~。最後にまだ本人も気づかない(?)希望を感じるのが、本当に嬉しい。2011/09/24
バーベナ
4
篠崎氏の素敵な小屋にうっとりしてしまう。こんな世界があるなんて。もう絶対ふたりはうまくいくと思ってしまう私は、みそっかす小娘だ。ダメだなぁ。一緒に失恋した気分。2018/02/08
Aya
4
「人に取られたくない」という独占欲が、愛のかたちなのか。とても興味がある大学生で酒癖の悪い優と中年で大人の色気と優しさのある篠崎サン。安心してよりかかれる気がするけど、どうしてそうやさしくするの? 2014/11/15
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