花狩

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  • サイズ B6判/ページ数 293p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784860293185
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

内容説明

おタツはどうも情愛だけがこの世でいちばんあとまで生き残る価値のあるもののように思えてならなかった。―それにしても六十年にちかい一生に、大水も大火も見たけれど、人間同士が憎しみもないのに大量に殺し合う戦争ほどむごたらしいものはみなかった。大阪へはやく帰ろう。大阪のゴミを吸って生涯をすごした人間は、大阪で働いて死に、大阪のゴミになりたいのだ。

著者等紹介

田辺聖子[タナベセイコ]
1928年、大阪府生まれ。樟蔭女子専門学校国文科卒業。同専門学校在学中に終戦を迎える。文芸同人「文藝首都」「大阪文学」に所属。1958年初の単行本『花狩』刊行。放送作家として活躍。1964年『感傷旅行(センチメンタル・ジャーニィ)』で第五〇回芥川賞受賞。1987年『花衣ぬぐやまつわる…わが愛の杉田久女』で第二六回女流文学賞受賞。1993年『ひねくれ一茶』で第二七回吉川英治文学賞受賞。1994年第四二回菊池寛賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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優希

73
明治女性の生き様を見ました。苦しい生活ながらも強さを感じずにはいられません。メリヤス工場の女工だったおタツは、半次郎と結婚後も働き続けます。生活が潤ったのはほんの一時期で、貧乏、大火事、病魔と災難が続くのが痛々しかったです。戦争も勃発し、時代の流れを感じさせました。でも、どんなことがあってもおタツは生きて生きて生き抜く。周りに尽くしたり、妬んだり、世の中を嘆いたりしながらでもです。自分の身はあらかじめ定められたものと割り切れるおタツに泣けてきました。明るい作品ではないですが、出会えて良かったです。2015/05/08

35
今まで読んできた田辺聖子さんの作品とは全く違うものでした。メリヤス工場の女工だったおタツを明治から昭和にかけて描いた作品。煮え切らない半次郎を引っぱって結婚し、ふたりで必死に働いて小さな工場を設ける。火災、病、天災、戦争に見舞われながらもおタツは逞しく生きていく。とはいえ、おタツは決して強い女じゃない。大切なものを失う悲しみを心にいっぱい抱えたまま明るく振る舞う姿が心に残りました。2015/06/20

キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん

24
第一次世界大戦後の大坂、メリヤス工場で働く少女、タツの生涯。好きな人と駆け落ちのように結婚して、子供を産みそして波乱の人生。驚くのは田辺聖子氏が27歳の時にこれを書き上げた事である。宮尾登美子なみの筆力。ラストは決して幸福ではないけど、主人公の開き直りにも似た清々しさがあり、明るみがある。2018/12/31

れお

7
田辺聖子さんの生家、田辺写真館に勤めていた女性がモデルだそう。メリヤス工事に勤める女性が、好きな男性が煮え切らないので、一緒になれないなら心中する所から始まる。結婚し、娘や息子に恵まれたが、幼く病気で亡くしたり戦争に取られてしまったり。水害や大火などは仕方ないのかもしれないが、国と国とが人を殺し合う戦争に取られる為に、子供を育ててきたんやないと言う親の気持ちは泣いて済ませられる問題ではないと思う。ずっと田辺作品を読んできたが、これは何故か読んでなかった様で、出会えて良かったと思う作品。2013/03/05

バーベナ

4
明治生まれのおタツ。メリヤス工場の女工から、惚れた亭主:半次郎と共に独立したあとも、働くことを厭わないおタツ。景気の良い時はほんのちょっぴり。不景気に大火事に病魔に戦争。時代の流れと共に、次から次へと庶民を襲う災難のなか、とにかく生きる。生き抜く。女は強いのではなく、ただただ目の前のことに一生懸命なのだ。2011/11/28

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