内容説明
書物界の魔人が世にあふれる“人と本との接触の痕跡=マルジナリア”を追う。書き込みを見つけては考え、知る、新しい本の愉しみ。
目次
わが「魔改造」
読書とはツッコム事と見付たり
攻めの読書は創作のエンジン
マルジナリアは人生も変える
マルジナリアンの受難
広めにお願いします
試論は続くよどこまでも
描いたっていいじゃない
引きすぎにご用心
デジタルだって書き込みたい!
残響のマルジナリア
足りなかったら書けばよし
やがて消えゆくマルジナリア
マルジナリアで暮らしてる
索引をつくろう
楽譜になにを書き込むか
ゆっくりとしか読めぬ本
言葉の壁を乗り越える
驚きの痕跡に驚く
形あるもの変化する
同じ本なのに
見失われた文字を求めて
ときには場外乱闘のように
デリダは何を読む人ぞ
プログラマの気持ち
マルジナリアことはじめ
とある蔵書のインデックス 索引術で深める読書の技法
著者等紹介
山本貴光[ヤマモトタカミツ]
文筆家、ゲーム作家。1971年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。94年から2004年までコーエーにてゲーム制作(企画/プログラム)に従事。在職中から執筆活動を開始、04年にコーエー退社、フリーランスに。1997年より吉川浩満と「哲学の劇場」を主宰。日本図書設計家協会客員会員。金沢工業大学客員教授、立命館大学大学院先端総合学術研究科講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コットン
83
マルジナリア:『本の余白に書き込まれたもの』。なかなかマルジナリアを書く習慣もなく、今のところ直接本に書こうとも思わないが、より読書を深く楽しみキーワードによる他の書籍との関係性を調べるなどの研究のために言おうとしていることは良く分かる。何かしらこの本のエッセンスを参考にして自分なりの読書や調べ方の参考にしていきたいと思わせる魅力がある本。2022/03/25
けんとまん1007
63
本はよく手に取るほうだと思う。それも、物理的な本を手に取ることに拘りがある。質感、重さだけでなく、あちこち読み返すとか。マリジナリア、初耳の言葉。書き込みをしながら読む。なるほど・・・学生時代に、資本論をそうやって読んだ記憶が蘇る。線を引く派だった。最近は・・・というと、図書館で借りるので、もちろん、そんなことはしない。時々、線を引いた跡があって、少しの怒りと大きな哀しさを感じる。edgeの機能か・・・知らなかった。違う部分で使ってみようかな。2021/09/13
ころこ
36
佐藤優は「有用書込み」といって、他人の書いた読解や解釈を参考にする効用のために古書の購入を勧めていました。「有用書込み」は自分が書き込むよりも、他人が書いたものを読む視点です。書き手の文字は印刷されており、書いた痕跡は残らない。他方で読み手は手書きのエクリチュールを読んだ痕跡として留める。手書きの文字は表現内容としてだけでなく、書かれた文字の形や大きさの連なりから、表現行為として別の意味も読み取る。マルジナリアによって本を読むこととは暗号解読に近い行為となり、印刷革命以前に戻ったような感触を受け取ります。2021/01/22
とある内科医
27
余白の書き込み=マルジナリアについて、よくぞここまでと思う程極めて多角的に書かれており、めちゃくちゃ面白かった。内容が多彩でどのエピソードも印象的だが、読後感としては沸々と読書熱に火が点けられた感じ。漱石「馬鹿ヲ云へ」、ナボコフによるカフカ変身の虫のスケッチ、ハンナアーレントによるエピクテトスへの「!」、三中信宏「索引のない本はただの紙束である」を引用した索引の作り方など。どれも感情移入したため思わず内容を羅列してしまって、感想にならない…。本書にも索引が付けてあり、最後まで安心して読み込んだ。2021/12/30
Nobuko Hashimoto
26
本の余白への書き込み(マルジナリア)への愛情に満ちた本。著者も研究対象の書籍を精読し、本に直接メモしたり独自に索引を作ったりしている。著者や石井桃子、夏目漱石らの書き込みの写真も豊富で楽しい。/かつては私も直接本に線を引いたり書き込んだりしていたのだが、本がすぐ絶版になるので、人に提供できるよう書き込まないようになった。代わりに付箋をつけておいて、ノートにメモしたりPCに打ち込んだりしている。夫氏は精読するものはコピーを大きなノートに貼って、周りにたっぷり書き込むというマルジナリア拡大版?を製作している。2021/04/20