内容説明
日本では敵前逃亡罪となる可能性のあった彼らは、戦後、インドネシア独立戦争で英雄となった!太平洋戦争には日本兵として敵と戦い、戦後は現地に残って独立戦争のインドネシア兵となった彼らは、なぜ日本に帰国しなかったのか。残って何をやっていたのか。その数奇な運命を重厚な取材でたどる。
目次
第1章 マンゴーの墓標―元海軍軍属・藤田清の場合(スマランの友;ジャワへ ほか)
第2章 望郷―元陸軍伍長・土岐時治の場合(召集令状;終戦 ほか)
第3章 異国の愛―元海軍軍属・上田金雄の場合(終戦;離隊 ほか)
第4章 国軍葬―元陸軍軍属・南里勇の場合(別れ;拉致 ほか)
第5章 鎮魂歌―元陸軍一等兵・重河博之の場合(テープに残された肉声;軍属 ほか)
著者等紹介
長洋弘[チョウヨウヒロ]
1947年、埼玉県に生まれ。谷川岳の山岳ガイド高波吾策氏に師事。東南アジアや中東などを主に取材。近年では日本・インドネシア国交樹立記念メインカメラマンとして、インドネシア世界文化遺産、バリ島などを撮影。大学、市民大学、写真教室などの講師を勤める。文化庁登録写真家。作家。賞歴は、林忠彦賞、社会貢献者表彰、外務大臣賞(団)、国際児童年記念写真展大賞(作品を国連に展示)、土門拳文化賞奨励賞など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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S.U.
3
取材対象となったインドネシア残留元日本兵たちが一人残らず鬼籍に入ってしまった今、再度改訂版として刊行されたという本書。戦後もインドネシアに残り、今度はインドネシアの独立のため戦った日本兵たち。その後の彼らの人生を丁寧に取材したノンフィクションでした。現地で結婚して子どもたちを育てているとか、何の補償もなく貧困と隣り合わせであるとか、9割がイスラム教徒として生活しているとか、皆さん似たような人生を送っているように見えても、やはり一人ひとりに聞いてみるとその記憶や思いはそれぞれで、それぞれが重いと感じました。2025/02/11
だちょう
0
終戦後、インドネシアにいた日本軍は連合国側(というか旧宗主国オランダ)に武装解除させられることなく、そのまま独立勢力への治安維持を命じられたらしい。しかしそんな日本軍兵士の中には、日本軍を離脱して独立側についた人も千人くらいいたらしく、この本はその人たちについての本。よく知らなかったので興味深かった。脅されて独立軍に入った人、独立に手を貸そうと考えた人、原爆も落ちたし日本は終わりだと思ってインドネシアで生きることを決めた人。戦争に翻弄されるとはこういうことなんだなと思った。2024/12/29