内容説明
山西省北部に伝わる“乞食節”の調べにのせて文革(1966‐76)の真っ只中の寒村で暮らす老若男女の生き様を簡潔な文体で描き出す。二十九の短編と最終話の中編から構成され、子どもから大人までの約五十人が登場。各話の主人公がみな決まって精神的、社会的、あるいは肉体的な弱者であり、ささやかな幸福を求めて懸命に生きている。第七話までが全体のプロローグで、第八話以降のストーリーへと導いていく。各話の登場人物と場景も互いに交差し、圧巻の最終話では、性欲が強過ぎるラオズーズーの次男、ユージャオをめぐる話の中に各話の主要人物をほぼ全員登場させ、貧しくてもなんとかやっていた一家の壮絶な悲劇として完結させている。
著者等紹介
曹乃謙[ツァオナイチェン]
1949年、山西省応県生まれ。高校卒業後、山西省の晋華宮炭坑で働き、69年に大同鉱務局文化宣伝工作団に抜擢されて民族楽器の演奏者に。72年、大同市公安局の警察官に採用される。86年より勤務の傍ら小説を執筆
杉本万里子[スギモトマリコ]
東京都生まれ。北京大学人文学部中国語文学系卒業。共同通信社記者などを経て、現在に至る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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りー
30
流行りの中国文学、どこから手を出したものかと悩んで手に取ったのが装丁の青さに惹かれての本作。連作短編の形で文革時代の中国の片田舎を描いた一大群像劇。お世辞にも恵まれているとは呼べない人々が生きて死んで、それも時には自ら命を絶って、それなのにその生き様に悲壮感はなく、牧歌的な雰囲気すら漂わせている。一編一編は温家窰村のほんの断片しか描いていないのだけれども、それを三十も積み重ねることによって多面的に温家窰村という共同体を捉えられる造りになっているのが売り…らしいのだけれど、一私小説の集合としても十分面白い。2017/01/03
みねたか@
24
文革の前後だろうか、中国山西省北部の農村の村人の群像。貧しさ故,農家の次男三男は嫁も取れない。出ていこうにも食い扶持のあてもない。男は自らを炎に幻惑されて身を焼く蛾になぞらえ,女は男を馬に、自らを馬車になぞらえ副馬を持つことも厭わない。交わり,寄り添い,子をなす。満たされぬ欲望に身もだえするが,その中で淡々と生き,生きえなくなれば死を選ぶ。解説に「体のバランスも彩色もめちゃくちゃな泥人形のように簡素で素朴な味わい」とある。朴訥とした言葉,自らの分と相手の立場を守るという彼らの矜持が,力強く胸に迫る。2019/05/20
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