内容説明
諷刺と諧謔と幻想の名噺家W.マップが語る、吸血鬼、メリュジーヌ、中世版リップ・ヴァン・ウィンクルと言われる古代ブリトン人のヘルラ王の異界巡行譚等々、ケルト的民間伝承の幽霊譚、幻視譚、驚異譚、妖精譚、奇蹟譚、さらには当時の各修道会、ことにもシトー修道会や女性嫌悪と反結婚主義の激烈な諷刺譚などが満載である。
目次
第1部(宮廷と地獄の比較;地獄について ほか)
第2部(グロスターの修道士グレゴリウスについて;タランステーズの聖ペトルスについて ほか)
第3部(サディウスとガロの友情について;パリウスとラウススの不和について ほか)
第4部(結びの言葉(跋)
ウァレリウスから哲学者ルフィヌスへの妻帯を戒める忠言 ほか)
第5部(アポロニデース王について;ゴッドウィン伯爵と彼の性格の由来について ほか)
著者等紹介
瀬谷幸男[セヤユキオ]
1942年福島県生まれ。1964年慶應義塾大学文学部英文科卒業。1968年同大学大学院文学研究科英文学専攻修士課程修了。1979年~1980年オックスフォード大学留学。武蔵大学、慶應義塾大学各兼任講師、北里大学教授など歴任。現在は主として、中世ラテン文学の研究・翻訳に携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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syaori
51
プランタジネット朝の始祖ヘンリー二世に仕えた宮廷人・マップ師によるむだ話。その話題は、堕落する修道会への苦言から、歩く死者などの怪異譚、反結婚主義の主張、王たちの逸話まで幅広く、聞き手を飽きさせません。その広汎な小話たちを繋ぐのは嫉妬や貪欲が渦巻く「宮廷」という糸。つまり作者は自分の語りでヘンリー二世の宮廷を、彼が「われわれの時代」と言ったものを描き出そうとしているように感じます。そしてその、常に移ろい、しかし大きな時の中では常に変わらぬ宮廷という伏魔殿から、現代の人間社会をも透視できるように思いました。2018/08/31
刳森伸一
5
中世逸話集。歴史的事件や伝記、教訓譚から怪奇譚や幻想譚、さらには宮廷論までと幅広い。個々の逸話は非常に面白いけど、「閑話」という言葉から想起されるイメージとは異なり、中々歯応えがある文章でスラスラと読めない所も少なくない。2018/05/20
j1296118
0
『ヘルラ王』が主な目当てで読み、後の方でもう一度言及する際に「彼らはその彷徨いを愚かなわれわれに譲り渡したかのように見える」なんぞと言い出すウォルターに驚く。 オッファ時代のヴァンダル族王子ガドーの物語等、もっと長い形で読んでみたくなる(が多分無理な)エピソードが所々に2017/08/01