内容説明
オスマン・パリ大改造計画に乗じて巨万の富と官能美を獲ようと蠢く男女の闘い。ゾラが活写する変革期のパリが織りなす底知れぬ野望。
著者等紹介
伊藤桂子[イトウケイコ]
愛知県立大学フランス学科卒業。大阪大学大学院文学研究科修士課程修了。著述、翻訳に従事
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感想・レビュー
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NAO
46
「ルーゴン=マッカール叢書」第2巻。無一文に近い状態でパリに出てきたルーゴン家の三男アリステッドが、持参金付きの娘ルネを成り上がるための獲物として捕まえ、パリ大改造計画という巨大な獲物に食らいつく。二月革命からパリ大改造計画と、未曽有の変革の中で成り上がっていく人々の狂奔は、現代にも通じるものがあり、その描き方のリアルさに驚かされる。アリステッドはその最たる人物だが、彼自身もまた後発の者にとっての獲物であるという皮肉。アリステッドに食い物にされ、すべての資産をむしり取られたルネがあまりにも痛ましい。2016/03/31
kthyk
16
ゾラが好きなのは19世紀パリの都市と建築が詳細に描かれていること。前回の「パリ」に続きこの小説もまた、パリの街路・建物・教会・庭園という具体的な都市風景の中での人々の振る舞い。今回はナポレオン三世とオスマン男爵によるパリ大改造時代。まさにバブル期の日本にもあった不動産投機という「獲物の分け前」。その振る舞いはブルジョワ、分断される庶民は現在の日本と変わらない。しかし、日本の小説では舞台となる都市がこのように描かれることはない。薄い貼紙細工のようなパッケージデザイン都市では、小説の舞台となることもないのだ。2022/10/01
兎乃
12
再読。いつもながら描写の素晴らしさは圧巻。2014/02/12
きりぱい
9
叢書第2巻。ルーゴン家の三男アリスティッドが文無しから成り上がる。2巻にして3、4世代目となり、姓までサッカールに変えているので戸惑った。最初に立ち往生する馬車の壮観さなど、風俗部分の描写が圧巻で、部屋のしつらいや身だしなみからはかぐわしさが立ち上ってくる勢い。打算で迎えられた2度目の妻ルネがゴージャスに装ったり脱ぎすてたりすれば、アリスティッドは道路計画を利用して土地を転がし価格を粉飾。『フェードル』もどきの激しい情欲とあくなき金儲けに挟まれ、息子のマクシム一人極楽トンボ。欲望の狂騒は空しい一路へ。2011/01/13
Terry Knoll
2
19世紀半ばのパリは、大規模な都市再開発が進めれて地価が高騰。色々な思惑持った人達が集まっていた。 その一人サカールは、持参金目当てでルネと再婚。ルネが先妻の息子であるマクシムと男女の仲になった。 連日連夜の華やかな衣装を着た男女が集まり舞踏会。リネ達女性はサロンをつくり、高価な服・装飾品を競い合います。 永遠に地価があがり、好景気が続くと信じこむ心理は今と同じ。失敗に学ばず贅沢をもとめるのは世の常。 1990年前後に起きた、バブル景気の狂乱を描いたような小説です。結末はもうわかりますよね(笑 2016/09/29