内容説明
90年代末、子供から老人までを、巨大な「危機」が襲う―。それは様々な危機管理を突破し、あふれだしていく。三つの物語(新世紀エヴァンゲリオン・失楽園・アンダーグラウンド)四つの出来事(神戸の事件・鬼畜系・もののけ現象・14歳少年撲殺事件)から得体の知れない「危機」の影をとらえる。
目次
1 「情報の交叉点」と遭遇した(それは、危機からはじまった/『アンダーグラウンド』の場合;それは、危機からはじまった/『失楽園』の場合 ほか)
2 「危機」物語は九五年にはじまる(かかわりのない三つの物語/読者層も、ジャンルも、メディアも;一九九五年にはじまり/九六、九七年とひたすら膨張する物語 ほか)
3 危機管理から「危機」があふれだす(「危機」というキイワード/バブル経済の「危機管理」からはじまった;管理を無効化する「危機」/九五年体験は社会の危機管理へむかう ほか)
4 鬼畜系が「危機」を手なずける(「鬼畜」系は「危機」を楽しんでしまう/積極的な対処法として;「あぶない」を競い合う/「差別語」は妄想の死である ほか)
5 『新世紀エヴァンゲリオン』と心・家族・一四歳(『THE END OF EVANGELION』/虚脱感が怒りと失望と悲しみをつつむ;異化する劇場/かしこいファンをつくりだせるか ほか)
6 『アンダーグラウンド』と日本人・社会的責務(「アンダーグラウンド」とはなにか/村上春樹の転換をあらわすものとしての;「危機」の表象としてのアンダーグラウンド/「日の光の下で生きていかなくてはならない」とは ほか)
7 『失楽園』と「性愛」、そしてなにもなくなった(これも「劇場」だった/なにもない物語として;「危機」からはじまる/求められるものとしての ほか)