出版社内容情報
国内外にその名を馳せたNHK=日本放送協会で作曲された日本の電子音楽群。
電子テクノロジーとメディアの交錯によって作られた20世紀・未来の音楽の歴史の全貌が
ラジオ放送開始100周年の今年、はじめて明かされる。
1956年の黛敏郎・諸井誠「七のヴァリエーション」、1966年のカールハインツ・シュトックハウゼン「テレムジーク」、1967年の湯浅譲二「ホワイト・ノイズによるイコン」など音楽史にその名を刻む数々の作品が生み出される舞台となった「日本放送協会=NHK」。
本書では1925年の東京放送局開局によって訪れた、聴覚のみで伝える新しいメディア=ラジオの登場による新たな音響表現が模索された黎明期から、電子音響による創作の可能性が見出され、本格的に電子音楽制作を進めていくなかでNHKに電子音楽のためのスタジオが仮設された1954年、電子音楽が国家的規模のメディア・イベントで用いられた1964年の東京オリンピック、1970年の大阪万博といった黄金期での状況、そしてその役割を徐々に終えていく2000年代まで、NHKを中心とした日本の電子音楽の歴史を余す所なく調査・記述しています。
巻末には人名索引、主要作品リストを収録。
本書のポイント
◎書籍、雑誌・新聞記事、放送台本、自筆譜、内部資料、著者によるインタビューなどによりこれまで電子音楽スタジオの関与が確認されていなかった作品・新事実を多数発掘しています。また、調査対象は作曲家だけではなく、プロデューサー・エンジニアといった関係者にもおよび、集団創作に関わる人々の重要性を確認できます。
◎電子音楽の歴史は、効果音・擬音の制作、ステレオ技術を用いた立体放送、テープ録音、マイクロフォン録音、PCMの登場など録音再生技術の発展史としても読むことができます。本書では新しい音色としての電子音楽だけではなく、そうしたテクノロジーによる空間や時間、人間性をも含めた新しい音楽のあり方がどのように模索・実践されたのかについても記述しています。
◎新たな音楽として世界的規模で発達したミュジック・コンクレート、エレクトロニッシュ・ムジークが日本でどのように受容されたのか。既存の音楽との相違をめぐる作曲家・評論家たちの議論や、実際の電子音楽を聴くことがなかなか叶わないなかでの作曲や、理想の音響操作を実現するために制作されたオーダーメイドの機材など、黎明期の状況を知ることができます。
◎オンド・マルトノやテルミンといった初期電子楽器、その後のシンセサイザーなど、電子楽器が日本に紹介・輸入されていく過程にも触れられており、電子楽器受容史として読むこともできます。
◎本書では作曲作品だけでは
【目次】