内容説明
ヒッチコック映画とラカン思想の結節点を鮮やかに分析するスラヴォイ・ジジェク待望の評論集。
目次
『三十九夜』―イニシエーションの旅
『間諜最後の日』―真実なる嘘、現実的なる夢
『サボタージュ』―知りすぎていた観客
『第三逃亡者』―目配せを求めて
『バルカン超特急』―女は消えても〈女性〉は消えない
『巌窟の野獣』―主人の声
『レベッカ』―ミメーシスのミメーシス
『海外特派員』―復活したエディプス
『スミス夫妻』―パスカル主義者ヒッチコック
『断崖』―完全には死んでいない父親
『逃走迷路』―すべてを知ってはいない他者
『疑惑の影』―結合する環、引き離す環
『救命艇』―ポスト・モダンのヒッチコック
『白い恐怖』―口唇期・肛門期・男根期
『汚名』―私を愛したスパイ
『パラダイン夫人の恋』―法の名において〔ほか〕
感想・レビュー
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またの名
3
原題は「ラカンについていつも知りたいと思っていたのにあなたがヒッチコックに尋ねてみようとはしなかった全てのこと」。だからといって、『サイコ』の母なる超自我が生んだ禍々しい分裂機制だとか『マーニー』の被っていた抑圧を見事に解決した自由連想法の有効性だとかを考察するような、安易な俗流精神分析もどきは退けられている。ネタ自体はその後も反復されるお馴染みのものばかりで、特徴としては、ヒッチコッキアンの享楽のために捧げられている趣が強い。でもヒッチコッキアンが読んで感心するか、著者を射殺したくなるかは請け合えない。2013/11/20