内容説明
空腹という名の妖怪がいる、結婚を迫る妖怪がいる。ヨルバの民話から飛び出した魔訶不思議な妖怪たち。森の妖怪と狩人の、奇怪、奇想、奇天烈な変身合戦。アフリカ・ナイジェリアの奇才チュツオーラの幻の処女作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
126
生前邪悪だった死者と天国から神に追い出された人々が住む「妖怪の森」の五つの町を渡り歩く狩人。実質的な処女作らしく、『ブッシュ・オブ・ゴースツ』と同じ構図ながら遥かに野性味があって支離滅裂な作風。強烈な風貌を纏った妖怪たちは後年ほどの攻撃性もなく愛嬌を湛えていて肩の力を抜かせる。入り口は伝承テイストでも、五番目の町に入る頃にはキリスト教の影響が色濃く打ち出される。地上から罪の記録が届く地獄の王様の事務所、罪人が通れば角が生える「罪人の谷」、会話できなくなる「啞の町」など両界の自由奔放な縫合で読者を魅了する。2022/10/02
ちょん
18
なんという恐ろし本。妖怪の森に入り込んでしまいさまよい続ける狩人のお話。舞台はアフリカ。日本や西洋とは違う妖怪の雰囲気がすごく面白い✨妖怪というか化け物というか...。このお話の中で狩人、妖怪たちにいじめられ扱かれる上に、えげつない年月を、森の中でさ迷っていました。サラッと書かれる月日の経過が妖怪たちより怖かったかも。2021/05/16
topo
5
五つの妖怪の村を旅し幾多の困難を乗り越えた先に、地獄の業火と天国の天使の奏でる音楽が響き…。 ヨルバ人伝承に基づいた妖怪の姿はおどろおどろしく、その所業は無慈悲で時に凄惨だけど軽妙な訳文の効果もあり独特の可笑しみも。 エイモス・チュツオーラは初めましてだったけど、濃密さにガツンとやられた。 150頁ほどの中に濃厚な妖怪の森と数十年の歳月が濃縮されていて、時間を掛けずに読み終えたのに一週間ほど読んでいたのでは?と自分の時間進行感が覚束なくなった。浦島太郎みたい。2022/11/24
三柴ゆよし
5
奔放な空想力、プロットの軽視、拙劣ながら味のある語り口によって織りなされる神話的世界。狙ってというよりは、ほとんど偶然にそのかたちをなしたのだろう。こなれた現代小説を読みなれた僕らの眼に、チュツオーラの小説は非常に大胆かつ新鮮なものとして映る。ただ、その方法意識のあまりの欠如ゆえに、彼の小説は常に同様のパターンを踏襲する。デビュー作である『やし酒飲み』ばかりがもてはやされて、他の作品が日本では軒並み絶版となっている状況は、あるいはこのことに立脚している。2009/12/15
龍國竣/リュウゴク
2
妖怪のいる森に入り込み、様々な困難と出会うが、いつも飄々としている。その一方で教訓も含まれており、主人公自身も作中で学校の校長になる。いつのまにか天国を目指す話に変わる。スズキコージの絵の雰囲気も相俟って、絵本といっても良いつくりになっている。2014/09/12
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