内容説明
文学が遠ざけられる時代になった。文学はこのまま消えていくのだろうか…。人の心をあたため、うるおす新旧文学作品の言葉を見つめながら、文学の「魅力」を語り、文学を語る文章に思いをめぐらす。清新な言葉でつづる、荒川洋治の最新文学エッセイ。
目次
ぶんがくがすき
会わないこと
かたちが光る
論文の「香り」
動いた人たち
「新しい時代」の時代
雑記帳・本屋・風邪
チョーカイさん
「書物」の影
基本という「本」〔ほか〕
著者等紹介
荒川洋治[アラカワヨウジ]
現代詩作家。1949年、福井県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。早稲田大学文学部非常勤講師。TBSラジオ「日本全国8時です」(火曜朝8時)に出演中。著書に詩集『水駅』(書紀書林・第26回H氏賞)『あたらしいぞわたしは』(気争社)『現代詩文庫・荒川洋治詩集』正・続(思潮社)『渡世』(筑摩書房・第28回高見順賞)『空中の茱萸』(思潮社・第51回読売文学賞)『荒川洋治全詩集』(思潮社)、評論・エッセイ集に『世間入門』(五柳書院)『夜のある町で』(みすず書房)『本を読む前に』(新書館)『読書の階段』(毎日新聞社)などがある
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
メタボン
27
☆☆☆★ 荒川洋治らしい、ちょっとはぐれたナイーブな感性がいい。ほとんど読んだこともない名も知らない作家の作品があげられており、自分はまだまだ文学に染まり足りないなと思った。あと面白かったのは、荒川洋治にしろ三島由紀夫にしろ、子供の頃に「自分の本」を作っていたというエピソードだ。私もそれに近いことをやっていたことを思い出した。2014/11/02
tom
12
詩人という人たちの頭の中には、私にとっては、ちょっと近づきたくないというものが多々ありそうという気分を持つ。このことは、決して、著者だけのことではないのですけど。それはともかくとして、この本に載っている書評は、なかなか面白い。特に茨木のり子の「倚りかからず」。書評の要旨は、こういうもの。「みなさん絶賛している。「いい詩」(カッコ付の「いい詩」)ですから。でもね、この詩人、我が道歩いて、それを正しいと確信している。すごく威張っている。詩人は、どこにいるのだろう。臭いよね。とても臭う」。これは私の翻案です。 2018/03/25
つーさま
8
疲れている時、時間を持て余している時、読む本として荒川さんの本は最適だ。語り口は穏やかでどんな読み手も拒むことはない。しかし、それでいて核心をつくような言葉を放つものだからおちおちしてはいられない。例えば、この一節。<生きているしるしが、「会う」ことよりも、「会わない」ことのほうにあるのだ。>前後を省いてしまっていて分かりづらいが、この世の真理に鋭く切り込む一節だと思う。文学をやさしく分かりやすく語りかける荒川さんが私は好きだ。2013/09/28
さえきかずひこ
5
「文学が好き」とまっすぐに言えるのは、筆者ならではと思える。ひかえめで、しかし21世紀のことばの表現の行き方を的確に指し示す楽しい随筆がたくさんつまった一冊。2012/02/04
s_n
4
Ⅳの百年小説リストが特に楽しい。荒川洋治の著作を読むと、自分の世界が広がるような気がするが、書評あたりにくると、だんだん、そろそろ飽きてしまう感じは否めない。でも、この人は本当にすごい人だと思います。2012/09/07