出版社内容情報
本書は、2021年から2023年にかけて全国延べ81校、10,957名の中高生を対象に実施された体験型性教育プログラム〈びわこんどーむプロジェクト〉の記録である。中学1年生から高校3年生までの生徒にコンドームを届け、「触れて学ぶ」授業を通じて、性に関する知識のみならず、他者との関係性や自己決定について考える機会を提供した。
従来の学校における性教育は、知識伝達に偏りがちであり、実感を伴った学びに結びつきにくいという課題を抱えてきた。本書が紹介する実践は、そうした課題に対し、「本物に触れる」というシンプルかつ大胆な方法で応答したものである。授業ではコンドームの実物に触れ、その扱い方や意味を学ぶと同時に、相手との関係や自分の意思をどのように伝えるかといった、より本質的な問いに向き合う。
その結果、授業後のアンケートでは92.2%の生徒が肯定的な評価を示した。なぜ生徒たちはこの授業を受け入れたのか。本書では、アンケート結果や自由記述、教員や保護者の声をもとに、その理由を多角的に検証する。
また、学校という公的な場でこうした授業を実施するにあたり、どのような準備と合意形成が行われたのかも詳細に記録している。公立高校における承認プロセスや、教員間の議論、保護者への説明など、実践の裏側にある現実的な課題と工夫は、今後同様の取り組みを検討する教育現場にとって貴重な手がかりとなるだろう。
さらに本書には、講演会の内容や、HIV感染の広がりを体感的に理解するためのワーク、生徒から寄せられた質問と回答なども収録されている。これらは単なる記録にとどまらず、授業づくりの具体的なヒントとして活用できる内容である。
本書が提示するのは、単なる性教育の「正解」ではない。全国1万人の中高生が実際に体験し、考え、言葉にした「関係性の学び」のプロセスである。性をめぐる教育のあり方が問われる今、学校という場で何ができるのか、その可能性と課題を具体的に示す一冊である。
【目次】
●主な収録内容●
・ 情報過多の時代に生まれる、
ひとりぼっち
・ 学びが立ち上がる環境を学校につくる
・ 他人の性は、教育できない
・ 失敗したとき知識は最大の防御となる
・ 自分の感覚を他者の前で確かめる
・「 教えない」が生徒の学びをひらく
・ 男性教員が少数派になった理由
・ タブーの正体は責任の所在だった



