出版社内容情報
近代外交の様々な画期にかかわった外交家たちの足跡。明治から戦前まで、外交家たちの自伝・伝記・回顧録を集成。
外交官の個人文書の公開は現在ほとんどされていない。外務大臣経験者クラスでも、陸奥宗光や幣原喜重郎の例が辛うじて挙げられるぐらいである。近代政治史研究、特に政策決定過程などの研究上、個人文書の果たす役割ははかり知れないが、入手、閲覧ともに非常に難しいのが現状である。
本シリーズ『日本外交史人物叢書』は、これら外交官個人文書史料の不在を補うべく、外交官たちの自伝・伝記・回想録等を幅広く精査し、集成したものである。
●第10巻●小幡酉吉(同伝記刊行会編・同会・1957刊)
「支那問題解決の為その全力を傾注」(本文より)した中国通の外交官、小幡の伝記。当事者として関わった「対華21ヶ条要求」交渉の詳細が、第5章「大正四年日支交渉時代」として特記され、その発端から妥結に至るまでが、その間の小幡の奔走をまじえて活写される。第8章では、駐中国公使時代の姿が、第9章では、その中国観が詳しく語られる。他に、アレグマン拒否に至る経緯と当時の彼の心境について述べられ、最後にその人柄についての知友らの言葉で綴られる。