出版社内容情報
近代外交の様々な画期にかかわった外交家たちの足跡。明治から戦前まで、外交家たちの自伝・伝記・回顧録を集成。
外交官の個人文書の公開は現在ほとんどされていない。外務大臣経験者クラスでも、陸奥宗光や幣原喜重郎の例が辛うじて挙げられるぐらいである。近代政治史研究、特に政策決定過程などの研究上、個人文書の果たす役割ははかり知れないが、入手、閲覧ともに非常に難しいのが現状である。
本シリーズ『日本外交史人物叢書』は、これら外交官個人文書史料の不在を補うべく、外交官たちの自伝・伝記・回想録等を幅広く精査し、集成したものである。
●第9巻●川上俊彦君を憶ふ(西原民平著・同・1936刊)
ロシア通の外交官として、特にロシア革命後の日ソ交流に官民双方の立場にたって尽力した川上の在りし日の姿が、同僚や部下などの証言から語られる。乃木大将の通訳として歴史的な会見、旅順開城に立会った時の様子、ロシア革命後の日ソ国交樹立への奔走などが語られる。また本文に収録されている「伊藤博文公遭難当時を回顧して」は、自らも被弾した川上の眼を通して、同事件が生々しく語られる。