出版社内容情報
◎満洲、朝鮮、そして台湾―。さまざまな民族が交錯する「大日本帝国」の勢力圏。その白日夢の内実に迫る、幻の作品群が今ここに甦る。
★019. ことづけ 真杉静枝 1941年・新潮社
「カンニンニヤ(畜生)!」。国語政策によって日本語を流暢に話す台湾人が、老母の死に直面して思わず叫ぶ台湾語。『南方の言葉』など、短篇の名手真杉静枝の珠玉の作品集。(解説・河原功)
※著者紹介 真杉静枝 ますぎ しずえ 1901~1955 福井県生れ。台湾で少女時代を過ごし、両親の強制で17歳のとき結婚するがすぐに出奔。大阪で新聞記者となり、武者小路実篤を知る。1927年より「大調和」等に作品を発表。『小魚の心』『松山氏の下駄』など、男に愛されようとする女の純粋な心情を描いた私小説の佳品が多い。台湾を扱った作品に『駅長の若き妻』『南方の墓』、同じく単行本に『小魚の心』『南方紀行』などがある。
本書の特色
●日本「内地」中心の文学史から抜け落ちた植民地の文学! 待望の復刻選集。
●さまざまな民族の立場から、植民地の諸相が多面的に浮かび上がる。
●歴史的価値が高く、研究者から復刻を強く望まれていた作品を厳選。
●日本人以外の作家によって書かれた日本語文学作品も多数収録。
●各種図書館などにもほとんど所蔵されていない、閲覧困難な幻の稀覯本。
●各巻の巻末に解説(作家紹介、作品の背景、歴史的価値など)を付す。
●今日の近代文学研究の一大潮流である戦時下の文学研究にも不可欠の文献集。
●文学のみならず、近代日本史・アジア史の研究にも大いに有益な資料。