感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あつひめ
76
生きること…血反吐を吐く思いで生きる。明日が来るかもわからぬ中でがむしゃらに働く。毎日毎日。老若男女問わず。考える余裕すらない。今と同じ24時間、春夏秋冬なんて思えないくらい過酷な生活環境。今の自分の暮らしを重ねると恥ずかしいだけではなく、生き方にまだまだ真剣味が足りない気がしてきた。百姓として生きてきた者の声は、嘘偽りを感じさせない飾らぬ生き様が書かれている。吉野さんの声こそが時代の底辺で人から忘れ去られるような人たちの存在を浮かび上がらせる。現代、自分で命の終わりを決める愚かさに気づかなくては。2015/08/30
たかこ
10
今は亡き母が、昭和62年9月発行のクロワッサン「友へ、ぜひ読んでほしいと思う私の一冊。」に投稿したもの。34年もの間、ずっとこの号のクロワッサンを手元に持っている。母がなぜこの本を選んだのか、今となってはもうわからないけれど、母となった私が母を思うとき、生きることと親の思いの切なさがじっしりとした重みをもってくる。「”生”あるものへのいとおしさは、子をなした者であれば誰もが持ちうる感情であると思う。やすらかな寝顔、たしかな手応えを感じさせる重さ、そのぬくもり、息づかいは、子を持つ者のささやかな喜びで…続く2021/05/02
nbhd
4
あまりにも圧倒され過ぎて、ひとつきほど感想が書けないままでいた。もう神様的な筆力、夏目漱石と現代日本語のお手本としてもよいと個人的には思っている。農民詩人を夫に持ち、昭和を福島の農村で暮らしたお母さんの手記。2014/01/11
里のフクロウ
1
宮沢賢治は農民芸術要項において「芸術をもてあの灰色の労働を燃やせ」と檄を放った。吉野せいの世界はまさしく灰色の労働を燃やす精神世界の実践条理である。今となっては想像をはるかに超える貧農のなかで、「生きる」ことに対して圧倒的な気迫で臨む態度と自然に対する敬虔な眼差し、そして家族や同胞に対する深い愛情の発露は、生ぬるい生活環境で生きている私に対して「人間の尊厳」が鋭く胸をえぐる勢いで迫ってくる。壮絶な生き様である。それ故に愛が深い。芸術が尊厳の証であることを示してくれている。生涯の糧となる本を手にした。2015/04/10
takao
0
体験に根差している? 2017/11/17