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内容説明
取り調べ室で出されるカツ丼、駅のホームで叫び合う男女―。これらの場面を実際に見た人はほとんどいないだろう。だが、幾多のテレビドラマで繰り返し表現されてきた結果、これらは「定番のシーン」として、われわれの記憶に刻まれている。ドラマ表現の分析を専門とする著者が、「ベタなシーン」がいかに生まれ、どのように定着してきたかを社会背景や番組の制行事情から考察する、画期的テレビ論。
目次
序章 「ベタ」表現でめぐる記憶の旅
第1章 恋愛ドラマの主人公は傘をささない―恋する男女の記憶
第2章 食卓は今日も一席空いている―家族のいる風景
第3章 カツ丼と殉職が伝えるもの―刑事たちのいる風景
第4章 新任教師は初出勤に遅刻する―学園と青春の記憶
第5章 なぜ社長は清掃員に扮装するのか?―オフィスで闘う男女の風景
終章 携帯電話があっても男女の心はすれ違う
著者等紹介
中町綾子[ナカマチアヤコ]
1971年、石川県生まれ。日本大学芸術学部放送学科教授。テレビドラマ表現の分析を専門とし、大学では作品研究、脚本論などの講義を担当。日本民間放送連盟賞中央審査委員、ギャラクシー賞選奨委員、放送番組センター番組保存部会委員などを務める。新聞各紙でもドラマ批評を連載し、プロデューサーや脚本家など制作者との親交も幅広い(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ばりぼー
25
「『ベタなドラマ』とは、『多くの人たちが共有する、ありがちな表現を多用したドラマ』であり、視聴者の感性にフィットする表現として定着した『ベタ』は、日本人のメンタリティをひもとくカギとなる。テレビドラマのヒロインは『現実にいそうでいない存在』だ。魅力的な人物を描くには、視聴者が共感できる側面と、憧れる要素の両方がなくてはならない。」ずいぶん前にくりぃむしちゅーの深夜番組でベタドラマのコーナーを見て大笑いしたことを思い出しました。ベタにはベタとなる時代の要請があるのでしょう。その変遷を追うのも楽しめました。2019/10/10
千冬
6
ドラマにおけるベタとは、を実際のドラマを紹介しながら列挙している。もう少し「なぜこの表現を使うようになったのか」という点に突っ込んだ解説は欲しかったが、テレビドラマが普及した後の日本人のトレンドを時代背景を交えての紹介は面白かった。ベタ(あるいはお約束)と斬新さの配分は重要な要素なのだなあ。2011/01/08
ミヤマコ
5
序盤を読んで「べたってドラマにおいて大事なんだよ みる人に感動を与えるから、物語に引き込む大事なテクニックなんだ」みたいなことしか書いてない 「なぜそれに我々は感動するのか」までいかないとタイトル負けしてるような2011/01/13
メロン泥棒
5
取り調べにカツ丼を出したのは1955年公開の映画『警察日記』と言われているそうだ。そういう定番シーンのオリジナルを辿る内容だと思っていたが、最近のテレビドラマを中心に定番を解説しただけという印象。取り調べでのカツ丼に代表される人情警察から科学捜査で犯人を追い詰める理論派へが主流になる時代の流れは面白かったのだが、こちらも不完全燃焼。ただ、序章にもベタな表現がバブル以降の日本人のメンタリティをひもとくカギとなる書いてあるので、元々そういう内容なのだろう。タイトルと宣伝文句がミスリーディングなだけで。2010/12/26
史
4
ベタ振り返りというか、テレビドラマ振り返りというべきか。なんというか、SNS時代以前以後でテレビドラマの内容もがらりと変わったんだなあと。今も年に数冊は出ているであろうテレビ関連の新書の一つなのだけれども、今(2024年)だからこそ当時(この2010年ですら変化していると思っていたのに!)の空気でそれ以前を批評していることの意味、その視点というのを知っておくのも悪くはないのかなと。古い新書であれども別方向での見方がある。2024/03/24