内容説明
集落をぬけると急に視界が開け、遠くの山並みが薄墨色に煙っていた。つづら折の道を何本か曲がったとき、西日に照らされた小屋がふいに飛び込んできた。「これだ!」その小屋を見た瞬間、つつましさの中に秘められた品格のようなものを強く感じた。北海道から沖縄まで4年間の徹底取材。日本列島小屋行脚。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
内島菫
17
『湾岸原野』よりもよかった。芸術しようとしていないものの芸術性と、半分打ち捨てられ忘れられたものの持つ痕跡の厚みを楽しめる。やはり東北の小屋の侘しさは良い。北海道の黒ずんだ昆布小屋の「エキセントリックな」黄色い扉に付されたキャプション「そのままロシアなどの大陸に連なってゆく色づかい」に納得。小屋自身のさびれ具合だけでなく、周囲に咲く桜や水仙、背後に背負う雲や海の色合いをも含めて小屋に風格を与えているように感じる。2019/11/23
deerglove
0
「つつましさの中に秘められた品格」なるほど、品格という表現が適切かどうかはわかりませんが、鄙びた作業小屋ならではの正直さ、頑固さ、潔さ、遊び心を感じますね。きっとどんどん数は減るばかりかと思いますが、こういった存在に目を留める感性は失いたくないものです。2016/05/05