内容説明
本書は、東チェロキーの山中における著者と祖父母との生活をつづった自伝的な回想録である。1930年代、経済大恐慌下の一生活記録として貴重だが、単にそれだけのものにとどまらず、どんな時代のどんな人にも共感を与えうる人間的な記録に高められている。万人の精神に語りかけ、魂の最深部に訴えかける力を持っている。
目次
ぼくの名はリトル・トリー
母なる大地とチェロキーのおきて
壁に揺れる影
赤狐スリック
理解と愛
祖父母の昔話
サツマイモ・パイ
ぼくの秘密の場所
危険な商売
クリスチャンにだまされる
はだしの女の子
ガラガラ蛇
夢と土くれ
山頂の一夜
ウィロー・ジョーン
教会の人々
黄色いコート
山を降りる
天狼星
家へ帰る
遠い旅路の歌
著者等紹介
カーター,フォレスト[カーター,フォレスト][Carter,Forrest]
1925年、アメリカのアラバマ州に生まれる。遠くチェロキー・インディアンの血を引き、それを誇りにした。作家として出発したのは48歳。第一作の『テキサスへ』はクリント・イーストウッド監督・主演により映画化された。わずか四つの作品を残し、1979年54歳で急死
和田穹男[ワダタカオ]
1940年神戸に生まれる。早稲田大学仏文科中退、東京外国語大学フランス語科卒。書籍編集者を経て、翻訳業、画業に転ず
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感想・レビュー
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クリママ
43
チェロキー族のリトルトリーは5歳で両親と死に別れ、祖父母と暮らし始める。祖父の仕事を手伝い、わずかに収穫できるトウモロコシからウィスキーを作り、一緒に出掛ける。文字の読める祖母からはいろいろなことを学ぶ。が、心無い白人によって辛い思いをさせられる。リトルトリーを助けてくれる老インディアンがいるが、彼も祖父母も亡くなり、一人で生きていかなければならない。幸あれと願うが、私の思う幸と彼の思う幸とは違うのかもしれない。祖父の自然、生き物、キリスト教などついての考え、謙虚な生き方に教えられ、目を覚まされる思いだ。2024/02/11
たまきら
32
読み友さんの感想を読んで。ぽつりぽつりと描かれる逸話がすべてキラキラしてました。チェロキー族については少しだけ勉強したなあ。外国人の子供たちが多い学校だったので、アメリカ史の汚点であるこの史実に、先生が言いにくそうにしていたっけ。読み終わって気づいたら涙がぼたぼた落ちてました。びっくりするぐらい日本の山岳を舞台にした小説と似ている気がしました。読んでよかった!2019/09/09
Yoko
16
すばらしい作品と出会った時って気持ちを軽々に言葉にできない。そんなことないですか? 春の描写が好き。清少納言なんて目じゃない。冬籠りの準備をする様子もワクワクする。そして生きることについてシンプルで核心をついた祖父母の教えの数々。 また何度も手に取ると思う2019/05/08
名駿司
12
★★★★★ 『サンカの民を追って』で物足りないと思った私が望んでいたのはこれだったのだと得心。自然の中で暮らすネイティブの少年の物語。自然の優しさも厳しさも、それに包まれて暮らす人間の生き方も、とてもよく伝わってくる。ラストが急ぎ足だったが、全体を損なうものでもない。とても良かった。何故今まで読んでいなかったのだろう。2019/05/01
algon
10
そういえば「腹を抱えて笑う」ってこの頃やってないなぁ…と読んでる間感じた。自分、文明度の低い地域に住んでるから作品で描かれている環境に違和感はないがそれでもチェロキーインディアンの祖父母と共に生きる5歳のリトル・トリーに何度も胸を詰まらされた。しかし被圧民族でしかも教会に懐疑的な内容を含んでよくアメリカでロングセラーを続けたものだと。自然や運命に謙虚で懸命に生き、ごく当然のような強いきずなの家族愛(犬も含めて)、そういう事からどんどん遠のいている現代の自分達を思う。この本は読み継がれるべき。いい本だった。2024/01/19