戦争の悲しみ

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 370p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784839700928
  • NDC分類 929.373
  • Cコード C0097

内容説明

キエンは何度も死地を生きのびた。だが、戦争という苛酷な体験は、彼の心身に癒しがたい傷を残した。凄絶な戦闘、ジャングルをさまよう死者の霊、部下たちの気高い自己犠牲…痛切な思い出の数々が彼につきまとう。戦後のハノイに生還して、キエンは奔放で情熱的な同級生フォンと11年ぶりに再会する。かつて二人は狂おしい愛で結ばれていたのだった。だが今は、芸能会の放恣な生活に身を委ねるフォン。ここにも戦争の深い傷あとがある。極限状況における人間の悲劇性を見てしまった二人に、はたして青春の愛は回復するだろうか?ヴェトナム作家協会賞受賞・英インデペンデント紙海外小説賞受賞。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

遥かなる想い

232
全編を貫く哀しみの基調が心に痛い。 ベトナム作家によるベトナム戦争の悲しみを 描く。アメリカ視点のベトナム戦争の映画は 多いが、ベトナム視点の物語は新鮮で 本当に哀しい。アメリカはあの戦争で何をしたのか..生き残ったキエンの追憶を通して 読者に伝わる戦争の悲劇は ヒロイン フォンの 哀しみとも重なる..殺戮と陵辱の繰り返しの 中で フォンが見た風景は何だったのか.. 宿命の二人の後日の幸せを祈らざるを得ない、 衝撃の物語だった。2017/02/14

まふ

121
ヴェトナム人作家によるヴェトナム戦争を生き抜いた男女二人の愛情物語。ヴェトナム戦争の発端から収束までを第三者の眼で見てきた日本人の我々は、これまで多くのアメリカ映画によってその悲惨な状況を具に理解してきたつもりだったが、その敵の「当事者」の立場からの物語は初めての経験であった。ストーリーそのものは想像できる内容であった。が、結果的にアメリカを弱体化させ、自信喪失状態に追いやったヴェトナム人の誇りのようなものを感じたりした。 G1000。2024/02/29

NAO

56
戦争の悲しみと、戦争によって引き裂かれてしまった恋人たちの悲しみ。この戦争が、どれほど多くの人々に悲しみをもたらしたか。戦争は、人間を翻弄し、その人の生活や境遇を一変させてしまう。ベトナム戦争では、200万人の民間人が殺され、両軍合わせて、若い兵士が130万人亡くなった。生き残った人々の心にも、暗く重い傷を残した。キエンは、アルコール依存症になったが、自分が見聞きしたことは書き残そう、と筆をとる。戦争がいかに愚かで悲しいものかを伝えるために。2025/09/22

ケロリーヌ@ベルばら同盟

56
17で人民軍に志願入隊した。史上最長の局地国際戦争の終末期の10年間を最前線で闘い抜いた。キエン、歴戦の勇者、不死身の男、「悲しみ屋」。雨霰と降り注ぐ弾幕、敵味方の血に塗れる白兵戦、凌辱され、惨殺される者たちの叫び、密林を敲く驟雨。戦争が穿った深い心の穴の底に数多の白骨が沈む。遠い過去から吹く哀しみの風が骸を揺らし、幽かに唄う。無名の者たちの生き様、生と死のあわいに放り出された人間の本質と実存を記録し、生き残った者の聖なる使命を果たせと。塞がらぬ傷口にペンを浸し、書き綴られたかのような静謐と悲愴が胸を抉る2019/06/08

らぱん

49
引き込まれて一気に読んだ。人民軍元兵士の側から描かれたベトナム戦争。溌剌とした恋人との瑞々しい思い出と血と泥にまみれた白兵戦のコントラストは明暗や色彩だけでなく臭いすら感じさせる。現在と過去を自在に行き来する構成で、追憶が時系列に従わず、フラッシュバックのリアルさを思ったが、物語が進むにつれ深い古傷が後回しになっている構造だとわかる。結果として追体験は生々しく強烈な印象が残る。書くことによって追憶に輪郭を与え意味を与えようとする姿勢は痛ましい。戦争の不条理はもちろんだが根源的な孤独を強く感じた。2019/03/06

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/229931
  • ご注意事項

最近チェックした商品