内容説明
凝視しながら人生を考える。ピュリッツァー賞作家の「これが私本来の仕事」知性がピリリと利いた随想14篇。
目次
イタチのように生きる
密林の中で
プロヴィデンチャの鹿
石に話すことを教える
はるかな丘の上で
皆既蝕
レンズ
岩上の生命、ガラパゴス
沈黙の草原
戸口に立つ神
蜃気楼
逗留者
エースと8のカード
極地への遠征
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
凛
14
彼女の文を読んでいるとガラスを知らない生物になった気分になる。手に触れられる距離にあるのに何故か触れない、この世の自然を全てを封じ込めてあるのに動く五感は視覚のみであとは知覚するしかない。後半に進むにつれて五感は少し機能し始めたのでガラスではなく氷だったのかもしれないけれど。希有な文体だし、このエッセイ集はかなり人を選ぶだろう。自然を見て内省することを極めてる。とても素晴らしい。「極地への遠征」が好き。そして地味に奥歯本だった。2013/08/12
きゅー
6
ネイチャーライティング。だからといって多くの人々がイメージするような自然讃美ではない。自然という与えられた条件の中で進化し、今ここにいる私という存在を探るまなざしがここにはある。それは捕えられ、食われるためにこれから殺されなんとする子鹿を見つめる冷静なまなざしでもある。 「極地への遠征」が白眉だ。彼女の、キリスト教の神への複雑な思いと、極地へ--そして死へ--赴く探検隊の記録が「相対的に到達至難の極点」というキーワードで結ばれる。アニー・ディラードの書くものは、自然そのものではなく、彼女の内なる自然だ。2011/10/27
ふるい
5
著者自身が本書について「生命の力強さと複雑さを表現することが狙いだった」と述べているように、時に畏怖の念も伴う自然との邂逅を通じて、そこから汲み取られた人間としての生き方や、神との向き合い方が、押し付けがましさなく綴られている。魅力的なエッセイ。2022/03/28
朧爪うつら
3
好きか嫌いかでいえば、好きだけど同類すぎて吐き気がし出すというような説明しづらいあれ、ですね。最後の最後にこの本の中でもディラードの必殺技テレポーテイションが最も煮詰まった文章はじまるる(はじまるるとは)、な章が持ってこられていたので頭が痛い。すごいんだけどこんな文章四六時中読んでたらうつ病になる。確実に。2023/10/21
マサ
1
これはエッセイなのか、小説なのか、紀行文なのか、哲学書なのか…。抽象的で難解な比喩に苦しみながら、しかし著者の文章の本質はこの比喩にこそあるのだと思う。直喩、暗喩があふれ出して目の前の事象が時空を超えて行き来する。「皆既蝕」「岩上の生命、ガラパゴス」など、その現象や自然のダイナミックな展開が鮮やかに浮かび上がり、著者の感性、思考とともに記述される内容は感動的だ。全ての教条的なものを疑い人間がとらえられる生の情報を思考の基とする意思が感じられる。2025/03/11