出版社内容情報
"アメリカで、日本で、あらゆる層の人々から激賞された感動のロングセラー。
美しい自然のなか、両親を亡くした5歳の少年は祖父母の愛情に包まれてインディアンのライフ・スタイルと精神性を学んでゆく。優しさと痛みとユーモアにあふれたこの物語は、きわめて素朴な語り口ながら、魂の最深部からの共感を呼び覚ましてくれる。
「久方ぶりの感動だった。それも心の底の底からの。山から噴き出す清烈な湧水に身体から心まで洗われた気がした」(倉本聰氏推薦文より)"
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちゃちゃ
100
心が洗われるような読書だった。リトル・トリーは幼い頃に父母を亡くし、チェロキー族の血を引く祖父母に育てられた。祖父からは自然の掟を、祖母からは魂の存在を教えてもらう。インディアンはかつて、白人たちに父祖伝来の土地を奪われた迫害の歴史を背負う。けれど、その暮らしは常に自然の円環の中にあり、生きる全ては自然が教えてくれた。天候の移り変わり、作物の生育、人間の命の終焉さえも。本作は、現代人が失った豊かで尊いものを、私たちに深く問いかける。途中何度も熱い涙が頬を伝い、物語を読む幸せに包まれた。魂に響く名作だ。2023/12/24
神太郎
45
とても、きれいな物語である。チェロキー族(アメリカ先住民族)の祖父母に育てられたリトル・トリーの目線がとても新鮮で純粋である。心の豊かさこそが本当に大事なことであり、物質的なもので満たされ、それこそが幸福であるという現代社会を皮肉る感じが僕たちにかつてあった感覚を思い出させてくれる。自然に目を向けるということをいつの間にか忘れてしまっていたな。最後ら辺にはおじいさんやおばあさん仲良くしてくれたお年寄りの面々が亡くなり相棒の犬たちも亡くなっていくが来世を信じて悲しくもまた会おうという希望ある形は珍しい→2021/05/14
なお
44
以前から気になっていた『リトル・トリー』。幼くして父母と死別した『リトル・トリー』は、山奥に住むチェロキー族の祖父母と心豊かに暮らす。チェロキー族は、北米アパラチア山脈に住んだ森林インディアン。彼らは自然を征服しようとはせず、自然のおきてに従って生きる。そして誰でも二つの心を持つと言う。生き続けるための身体の心(ボディーマインド)と霊の心(スピリット・マインド)。霊の心は欲深さや狡さ、人を傷つけると縮んで無くなってしまう。彼らを理解せず差別する白人達。この本に描かれた自然の姿が今も残っていて欲しいと願う。2024/02/15
紅香
21
この世界を取り巻くルールは秩序を守るためである。でもその秩序も国によってはあやふやで、足並みが揃うはずはない。そもそも秩序とは。。チェロキーの言うおきては普遍的な自然に沿ったもの。その考えは岩のようにどっしりとして、不動。ルールよりも遥かに意味を持つ。人間は自然の一部で科学を進歩させないといけない道理はないように感じる。世界は力をつけ始め、自分の首を了見を狭める。『教育とは技術を養うものと物事を尊重する心を育てる 2本の幹が必要』自然は私達に教える『蝶はせまってくる死にいささかもうろたえない』と。2022/03/09
カタコッタ
18
自然とともに生きる、それだけのことである。これほどシンプルな物語も少ないだろう。しかし読後の胸を締め付ける感動はいったい何だ。私の中にもある真っ新なこころがキュンとしたのだ。静かでありながら魂に届く物語である。2024/03/15