出版社内容情報
1枚の絵が心に残っていた。23年前、留学先のジョクジャカルタの下宿に掛かっていた美しい風景画だ。そして、1冊の本が心に残っていた。インドネシア民族主義、女性運動の先駆者、わずか25歳にしてこの世を去ったカルティニの書簡集だ。もう一度、あの2つに立ち返って考えてみよう。──惜しまれながらこの世を去ったインドネシア研究の第一人者が、心に残る1枚の絵と1冊の本の思い出からインドネシア100年の民族意識のありようを書き下ろした画期的作品。インドネシア研究が文学に昇華した1冊として各方面から絶賛を博しました。
風景の中へ
カルティニの生涯
カルティニの時代
風景の誕生
時代の風景
風景の行方
クロンチョン音楽の旅
「うるわしの東インド」旅
うるわしのインドネシア
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
makimakimasa
7
ジャカルタ在住5年目にして近所の偉人壁画でその存在を知り、後に出生地ジュパラのカルティニ港を利用する機会もあり、興味を持った。産後熱で1904年に25歳で早逝した女史は、生前に何を成し遂げた訳でもない。婚前閉居中に宗主国の雑誌広告でペンフレンドを募集し、その開明的聡明さが人々の心を打ち死後に書簡集が発表、一躍名声を得た。その中に描かれたジャワの風景描写を結び付けて、民族意識覚醒前夜のノスタルジックな時代心象を炙り出そうと試みている。『ブンガワン・ソロ』に代表されるクロンチョン音楽を絡めた考察もあり。2022/05/25
belier
1
90年代に書かれた本。60年代後半にインドネシア留学した自分を振り返りつつ、約100年の歴史について考察。民族英雄カルティニも大衆音楽クロンチョンもインドネシアの民衆に愛され民族主義の原動力になった。しかしオランダ領東インド政府は故カルティニの存在を利用し、植民地支配を永続させようとした。また独立したインドネシア政府は上からのナショナリズムで道徳教育を行い、「うるわしのインドネシア」を人々に刷り込もうとした。うるわしい生活は富裕層が独占しているのだが。貧しい人へのカルティニの思いを引用しこの本は終わる。2015/12/23
きょんちん
0
カルティニという女性をとても近く感じました。そのみずみずしさがいとおしい。