出版社内容情報
『人間の大地』は、1969年から10年間流刑地ブル島に勾留され、表現手段を奪われたプラムディヤが、同房の政治犯にそのストーリを日夜語って聞かせたという、途方もないスケールの4部策の第1部である。舞台は1898年から1918年にかけてのオランダ領東インドで、インドネシア民族が覚醒し、自己を確立していく長い闘いを描いた、これはいわばインドネシア近代史再構成の物語といえよう。
1980年、同書が発行されると、インドネシアの人々は熱狂してこれをたたえ、初版1万部が12日間で売れるという空前の評判を呼んだ。当時の副大統領アダム・マリクは、彼らの親や祖父たちがいかに植民地主義に敢然と立ち向かったかを理解するために、この『人間の大地』を読むよう若い世代に奨励すべきである、との推薦の辞をよせ、またある評者は、この本はこれまでに出たすべての歴史書の存在を無意味にしてしまうとまで激賞した。
余りの影響力に驚いたインドネシア政府は本書『人間の大地』第2部『すべての民族の子』第3部『足跡』を発禁処分とし、現在もその処分は解けていない。しかし、海外での評価は高まるばかりで、世界各国で翻訳発行されており、昨年1998年もノーベル賞候補に挙がっている。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
s-kozy
53
義父の推薦小説。プラムディヤ・アナンタ・トゥールの長編四部作の一つ。(本書「人間の大地」「すべての民族の子」「足跡」「ガラスの家」で四部作となる。)時は19世紀末、所はオランダの植民地支配を受けるインドネシア。プリブミ(現地人)、純血ヨーロッパ人、インドゥー(混血)が織りなす物語。支配する者、される者。学問のある者、ない者。それぞれの立場に立って物事を捉え判断し、行動していく。インドネシアの夜明けは近いのか、この先どうなる?予想を裏切る意外な場面展開が続き、非常に面白い。楽しめる小説になりそうな予感。2017/07/26
syaori
42
舞台は20世紀が始まろうという蘭領東インド(インドネシア)。物語の始まりは、現地民エリート学生ミンケと混血の美女アンネリースとの出会いから。それは現地妻(ニャイ)ながら独学でオランダ語や経営を学び大農場を経営するアンネリースの母との出会いでもあり、彼女たちとの交流、その家庭の問題から入植者>混血>現地民というヒエラルキーの確立した植民地の矛盾が浮き上がってくるよう。それを訴えるニャイの誇り高い怒りには何度も圧倒されました。ミンケも伝統的な自分の家族との葛藤があるようで、もう物語から目が話せません。次巻へ。2017/11/24
belier
3
19世紀末、オランダ支配下のインドネシアが舞台の小説。とにかく面白い。小説の中で言及されているユーゴーばりだ。つまり19世紀の大文学のスタイルでヒューマニズムに溢れている。古くさいと言えばその通りだが、そんなことはどうでもよくなる面白さ。ストーリー展開が巧みで飽きさせず、読む手が離せなくなる。登場人物も魅力的。またヨーロッパに植民地とされた現地の人々の心理と支配者の心理が生き生きと描かれており、歴史を実感できるところもいい。多くの人々に読まれるべき小説。図書館の片隅や書庫で眠らせているのが本当に惜しい。2015/11/07
HARU
1
面白い! ミンケもニャイもオランダに隷属しつつ、その教育を受けて生きる術を得ることを計る。その教育には感謝するも、出世に狂う家族を壊し、民族を奴隷と化すオランダの支配に対して怒るプリブミの葛藤。2019/02/18
songbird
0
☆☆☆☆☆!2008/09/16