夏目漱石の手紙に学ぶ伝える工夫

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夏目漱石の手紙に学ぶ伝える工夫

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  • サイズ B6判/ページ数 237p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784838726516
  • NDC分類 910.268
  • Cコード C0095

出版社内容情報

“気持ちってこんなふうに伝えればいいんだ”漱石の手紙にヒントがありました。そんな書簡から52のヒントを紹介。ユーモアと親愛に包んで、あなたの本心を伝えましょう。軽妙な気持ちのかよわせ方、ていねいなこころの伝え方が、豊かで楽しく、潤いに満ちた暮らしを紡ぎ出していきます。

夏目漱石の書簡は、2500余現存し、その内容は、生活全般にわたります。
しかも、漱石の手紙は、芥川龍之介、武者小路実篤、佐藤春夫はもとより、多くの文人たちが愛読し、そこから多くを学んでいます。
生活書簡からにじみ出る、漱石の面白さ、そして、人生をどう生きるか、楽しむかということについて、手紙の端々から学びとることができ、若い人々にとっても非常に興味深い読み物といえます。
実用面でも手紙の基本を知ることができます。
ただし、漱石の手紙は、漢語調の文句や候文が混ざるなど、若い世代、あるいは現代においては、読みづらいものとなりつつあります。
そこで今回は、いわゆる超訳的なかみくだいた現代語訳を併記したり、現代語訳だけを紹介することにより、中学生でも十分に読みこなせる内容を目指しました。
この「夏目漱石の手紙に学ぶ 伝える工夫」では、漱石の、ユーモアを交えながら本心をうまく伝える、軽妙な気持ちのかよわせ方を紐解いていきます。親愛をこめた、ていねいなこころの伝え方が、豊かで楽しく、潤いに満ちた生活を築くということを、漱石の手紙から学びます。

はじめに 
第一章 あいさつの手紙                  
■近況報告/旅信
霧を角切りにして缶詰にして日本へ持ち帰りたい
――珍しい風物をできるだけ具体的に紹介する
■近況報告/赴任先の近況
近頃女房がもらいたくなりましたので田舎者を一匹生け捕るつもりです
――素直、シンプルを基本にし、ときどきやせ我慢をまじえる
■感想の手紙/家族写真を送ってもらった感想
このスピードで面白い方向に顔が変化していったらたまらない
――ユニークな表現で、生き生きとした感想を伝える
■お礼の手紙/作品をほめてもらったお礼
博士(はかせ)に推薦(すいせん)されたり勲章(くんしょう)をもらったりするよりも、はるかに勝(まさ)るありがたみです
――ときには感情的でおおげさな表現が深い礼意を強く伝える
■お礼の手紙/好意へのお礼
お礼を言うその一方で失礼も言います
――失礼を恐れず正直な感想をまじえ誠意を伝える
■お礼の手紙/贈り物へのお礼
大きな鮎をたくさんいただきました。とてもうれしく
――ちょっと大げさなぐらいにはじけて喜ぶ
■承諾/レコード録音の承諾
漱石の声を録音しに来たと聞いたらびっくりして目を回すだろう
――承諾の返事だけでなく、愛想よく楽しい話もサービスする
■承諾/値引きせずを承諾
絵は百円から一厘も引けぬとのお言葉、尊敬しながら承知しました
――条件をつけない承諾が理想で、承諾した理由があるとさらにいい
■季節のあいさつ/暑中見舞い
私は朝から晩までサル股一つですごしています
――暑さを言い合い、無事を伝え、健康を祈る
■季節のあいさつ/年賀状
恭(きょう)賀(が)新(しん)年(ねん) 夏目金之助 一月一日 東京牛込早稲田南町七番地
――自分の気持ち合った、賀詞とデザインを選ぶ
■通知/猫の死亡通知
昨夜いつの間にか裏の物置のかまどの上で逝去(せいきょ)いたしました
――感情をまじえずにシンプルに事実だけを伝える
■通知/本の送付通知
倹約(けんやく)してお金をおためなさい。時々拝借にうかがいます
――通知以外にいろいろな話をまじえると、さらにていねいな印象になる

第二章 行動をうながす手紙
■依頼の手紙/調べものを依頼する
いやだ、などと言ったら、卒業論文に零(れい)点をつける
――脅迫(きょうはく)めかして依頼すると、効果的な場合がある
■依頼/仕事の依頼
あなたの筆で雅やかで面白いものを描いてくださればとても幸せです
――相手の自信をさりげなくくすぐり、イメージをはっきりと伝える
■依頼の手紙/手伝いを依頼する
君は手伝いに来てくれるだろうね。伝四君、どう思う
――急がずあわてず、まずニヤリとさせてからものを頼む
■誘いの手紙/友人を観劇に誘う
一人ならそんなに行きたくもない
――行先よりあなたの方が大切だとそれとなく強調する
■誘い・勧誘/海水浴に誘う
ちょっと海に行って黒くなろうじゃありませんか
――楽しさを想像させる軽やかさ明るさ、興奮が必要
■案内の手紙/牛肉を食べる会への案内
牛のほかにはなにも食べるものなし
――通信事項を正確に伝え、シンプルに会の魅力をアピールする
■招待・案内/食事への招待
粗末な台所のあり合わせのもので、夕飯を差し上げたく存じます
――気楽に来られるように、ぎょうぎょうしさを排除する。
■紹介/仕事の紹介
君が生活に困るかと、君に頼まれもしないのに、少し心配していた
――おしつけがましくならないように細心の注意を払う
■紹介/人物紹介
悪人ではなさそうだというぐらいです。
――いい所も悪い所も隠さずに、ていねいに依頼する気持ちで紹介する

第三章 思いやりの手紙
■アドバイス/世の中についての考え方を教える
世の中は自分の想像とはまったく正反対の現象でうずまっている
――わかりやすい言葉で自分の体験をもとにして説得する
■アドバイスの手紙/金に対する心構えのアドバイス
金さえ見れば何でもするようになります
――相手の浮かれ気分をそこねないようにわかりやすく教える
■お見舞い/火事見舞い
もし見当違いだったら、ひたすらお許しを願います
――相手の不安をいたわり、こちらの心配を伝える
■お見舞いの手紙/病気見舞い
むやみに高い本はいけません
――さりげないユーモアがなによりの薬になる
■お見舞い/病人が病人を見舞う
早くよくおなり。お見舞いに行ってあげようか
――ユーモアが相手を安心させ、深い感謝を伝える
■お祝い/結婚祝い
評判になった女とは、とてもうらやましいかぎりだ
――改まったお祝いと気楽なお祝いを使い分ける
■お祝い/出産祝い
あかん坊が生れたそうでおめでとうございます
――相手の喜びに身を添わせて共に喜ぶ姿勢が大切
■忠告の手紙/強すぎる敬愛をなだめる手紙
私の言うことはお互いのために未来で役に立つと信じています。
――急ぐ気持ちを鎮(しず)めるために必要なのは清潔なやさしさ
■忠告の手紙/原稿を批判されてしょげている人への忠告
障子を一枚開け放ってみなさい。春風は思うままに吹くだろう
――相手の不満に同情し、激励しながら注意をうながす
■弔事/お悔やみ
なんともご愁傷(しゅうしょう)のことと はるか遠くからお察しいたします
――ルールから離れて自分なりの作法で弔(とむら)うのもよい
■感想/作品感想
自分の事は棚へ上げて未来の君のために一言するのです
――正直な感想は必要だが、自尊心を傷つけないように十分注意する

第四章 書きにくい手紙
■断り/借金を断る
申し訳ないけれども今貸してあげる金はない
――貸せない理由だけでなく激励のアドバイスも伝える
■断りの手紙/原稿依頼を断る
あなたの顔を立てたいのは山々なのですが
――やむをえず断るという根拠をていねいに伝える
■断りの手紙/転職の紹介を断る
こんなやつらを増長させたら世の中のためにならないから辞めない
――断る理由を熱くていねいに伝えるのが礼儀
■抗議/不本意な肩書きへの抗議
私は明治大学からからかわれているような嫌(いや)な気持ちになります
――冷静に礼儀をわきまえ、品位を保って依頼する
■抗議の手紙/不親切に抗議する
大変なことを話さないで帰るのはひどい
――抗議、愚痴は、相手への関心の強さを伝える手段にもなる
■お詫び/身内の不始末のお詫び
小宮は馬鹿ですからどうぞ気にしないようにしてください
――相手の怒りをごもっともと認めながらも、きっぱりと善後策を示す
■お詫び/返却・返済の遅れのお詫び
もっと早くお返しするつもりでいました
――冷や汗を流しながらご機嫌をとろうとする努力と誠意が必要
■お詫びの手紙/預かっていた手紙の紛失を詫びる
あんなうつくしい手紙を見たら泥棒(どろぼう)も改心(かいしん)して善心(ぜんしん)に戻るだろう
――紛失した事情を伝え、ユーモアで相手の驚きをやわらげる

第五章 手紙の知識
■はがきは失礼
失礼ですが、はがきでお礼を申し上げます
■長い手紙には長い返事を
僕には五メートル四十センチの手紙を書く勇気がない
■ワンレター、ワンテーマの原則
女性から手紙が来たよ。夏目先生のお近くに手紙を置きますと書いてある
■カタカナ文字・当て字の効果
子供の頃から「ドメスティック ハピネス」などということは考えず
■頭語(とうご)と結語(けつご)の常識、非常識
そのかわり時々ごちそういたします 以上(いじょう)頓首(とんしゅ)恐惶(きょうこう)謹言(きんげん)
■返信の書き出しのバリエーション
朶(だ)雲(うん)拝読(はいどく)。それによるとご病気日々全快に向かい祝うべきことと思います
■前文のあいさつの基本
厳しい暑さの時季ますますお幸せにおすごしのこととお慶(よろこ)び申し上げます。
■時候の書き方
伊香保(いかほ)の紅葉(もみじ)をもらって面白(おもしろ)いから机の上へのせておいたら
■手紙文の便利な終わり方
貝は子供がおもちゃにしています。余(よ)は後便(こうびん)
■相手の名前と自分の名前の書き方
自分は名字だけ書くなんてえのは失敬だよ
■脇付(わきづけ)の使い方
盆(ぼん)の十六日 平(たいら)凸凹(でこぼこ) / 物(もの)草(くさ)次郎(じろう)様 むしろの戸の中
■追伸の利用法
むやみやたらに「吾輩は猫である」の悪口などをいってはいけません

おわりに


【著者紹介】
中川 越 (なかがわ・えつ)

1954(昭和29)年東京都生まれ
雑誌・書籍編集者を経て、執筆活動に入る。古今東西・有名無名を問わず、さまざまな手紙から「手紙のあり方」を考える。 また、近代文学の文豪たちの書簡を手がかりに、そのエッセンスを紹介するなど、多様な切り口から手紙に関する書籍を執筆し、手紙の価値や楽しさを紹介している。著書に、『文豪たちの手紙の奥義』(新潮文庫)、『手紙・はがき書き方事典』 『名文に学ぶこころに響く手紙の書き方』(ともに講談社)、 『気持ちが伝わる手紙・はがきの書き方全集』(PHP研究所)、 『年賀状のちから』(CKパブリッシング)、 『すべての仕事で使える文書大事典』(永岡書店)など。高等学校国語教科書『高等学校 国語表現 II』(第一学習社・平成15年)に、「心に響く手紙」が、6ページにわたり収載される。2012年、日本郵便株式会社「年賀イノベーション研究会」に参加し、『年のはじめに触れあう心―年賀状のいま、そしてこれから』(日本郵便株式会社発行)に、「年賀状の系譜とことばに対する感受性」を執筆。東京新聞にて「手紙 書き方味

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

エリザベス

1
再読。この中にある言葉を、一つくらいは使ってみたい。頓首2018/08/25

クリボー2

0
夏目漱石というと気難しい方という印象でしたが、とても細やかな人という印象に変わった。2014/08/22

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