内容説明
きりのないふたつの旋律のようにからみあう、詩とエッチングの織りなす愛の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nonpono
48
谷川俊太郎が詩人としての自分より何回も結婚した自分が凄いと言っていて佐野洋子を思い出した。谷川俊太郎が詩、佐野洋子が絵。読みたかった詩集。もう完全に恋文のようだ。「何ももたずに私はあなたとぼんやりしにいく」(川)、ぼんやりまったりが大好きなわたしには最高の口説き文句に聞こえた。「笑いながら出来るなんて知らなかったとあなたは言う」(唇)、ふとした言葉から漏れる官能?、うまく言えないがどきどきする生の血が通った言葉に。「もう何も欲しいと思わないのに ただあなたが欲しい」(未来)、愛のかたまりを浴びた。幸せだ。2024/12/13
寛生
45
【図書館】未来完了形のような時間の感覚で書かれたような気がする。読んで来た谷川の詩とは、少し違う時間の感覚。私という命が、産道から出てくる前の時の流れが、雷が鳴り、風が大地の木々の間を吹き抜ける動きによって、闇から光へと蠢いていく。暗い子宮から「光のほうへ進んできたとき」と詩人は謳うが、時にはそれは過酷な試練でもある。そして、誰かによって、〈私の名前〉も与えられ、命は死と和解しながら生きていく覚悟をする。勿論、私と他者の体も魂も触れ合う。佐野洋子さんの絵はピカソが描く母像やシャガールの線を感じさせる。2014/06/02
はやしま
19
佐野洋子さんの絵本を読んだのをきっかけに久しぶりに手に取った。帯に「生まれる前から ふたりは知り合っていた 死んだ後も ふたりは別れない」とあるように、生まれる前の様子から未来も離れないという物語が36編の詩で綴られ、各々に佐野さんのエッチングが添えられている。ふたりが結婚したのが90年、出版が91年。当時は(大人の恋愛だなぁ)と憧れを持って読んだ。詩の内容と絵の雰囲気からジョンとヨーコのようだとも感じた。残念ながら二人の未来は詩のようにはならなかったけど、作品はいつまでも残って欲しい。2016/01/20
kochi
17
谷川俊太郎と三番目の配偶者であった佐野洋子によるコラボ。『詩人なんて呼ばれて』などによると、本書の発刊は谷川59歳で、佐野との結婚の翌年。二人の交流は数年前から始まり、年齢にしてはエロチックな詩の中には(絵も際どいし、谷川らしい禿頭の人物も登場)、明らかに佐野洋子を指していると思われる部分もある(「あなたがバイクを始動する」「日々また」から)し、誕生前から、出会いや死後に二人でからみあって虚空と戯れるとの表現もある中、結婚生活は谷川65歳で終わる。現実を気にせずに、ラブレターとして、受け取るのが良いか。2024/12/24
なつき
7
じわじわと深いところまで到達していくような詩。時折エロやかに時々無邪気に、文字と絵が愛をささやきあっているようだ。2012/09/27