内容説明
男もすなる「日記」といふものを、“女もしてみむ”とてするなり。という一文によって始発している『土左日記』。虚構の枠組みの中で、語り手自身は自己を女性の立場で語ることを宣言している。『土左日記』の書き手が、あえて自己を“女”に性の転換をしてみせることで何を目指していたのか、その虚構の方法についてさまざまな角度から照射する。
目次
第1章 『土左日記』の文化ジェンダー論―喩としての男性性の脱構築
第2章 価値逆転の論理・『土左日記』の虚構の方法
第3章 権威の脱構築化と「諧謔」の生成=パロディとしての『土左日記』―プレテクスト『古今和歌集』・『伊勢物語』の引用連関
第4章 「女もしてみむとてするなり」『土左日記』の虚構の方法―男性性の脱構築・再稿、あるいは象徴的な“女”への共感の論理
第5章 「童の」性は男か女か?初期散文叙述の特性検証―『土左日記』から『源氏物語』叙述への補助線
第6章 「波の底なるひさかたの空」貫之的鏡像宇宙と水平他界観―古代散文文学史遡行『土左日記』から『古事記』・『風土記』へ
第7章 漢詩文発想の和文『土左日記』―初期散文文学における言説生成の方法
第8章 『土左日記』の言説分析―「和歌」と「地の文」の曖昧な関係性を焦点に
第9章 「日常」のことばから「和歌」のことばへ―和歌生成論、もしくは『土左日記』の思想と言説
第10章 散文の「学」を拓く、『土左日記』研究
著者等紹介
東原伸明[ヒガシハラノブアキ]
長野県松本市に生まれ、奈良井川右岸桔梗ヶ原のある、塩尻市に育つ。國學院大學文学部卒業、同大学院博士課程後期単位取得満期退学。「古代散文文学史における語り・言説・テクストの研究」により、名古屋大学の博士(文学)の学位取得。現在、高知県立大学文化学部教授、同大学院人間生活学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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