目次
飛島・藤原
泊瀬・宇陀・吉野、他
山の辺の道
平城京
万葉の花、他
明日香‐有情「幻影を求めて」
著者等紹介
入江泰吉[イリエタイキチ]
1905(明治38)年、奈良県奈良市に生まれる。長兄より譲り受けたカメラで写真をはじめる。1931(昭和6)年、大阪に写真店「光藝社」を開く。1940(昭和15)年、世界移動写真展で「春の文楽」が一等賞を受賞、文楽の写真家として活躍。1945(昭和20)年3月、大阪大空襲で自宅と店舗を焼失、奈良へ引き揚げる。同年11月17日、疎開先から戻る東大寺法華堂の仏像を目撃、アメリカに接収されるとの噂を聞き、写真に記録することを決意。以来、奈良大和路の仏像、伝統行事の撮影に専念。晩年には「万葉の花」を手がけるなど約半世紀にわたって奈良大和路を撮り続け、大和の美をとらえた写真集は多数にのぼる。1992(平成4)年1月16日、86歳で逝去。同年4月、入江泰吉の全作品を収蔵した奈良市写真美術館が開館。第24回菊池寛賞受賞、勲四等瑞宝章受章、第19回仏教伝道文化賞受賞他(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みかん🍊
93
万葉集をテーマに奈良の飛鳥や吉野、平城京などの写真と共に万葉集の歌と訳で綴られた古の奈良の写真集、郷愁や恋の歌や自然を称える歌など今も昔も人の心は変わらないのかも。2020/12/11
しゅてふぁん
55
歌と写真と現代語訳と題詞、そして英訳のみのシンプルな構成なので思う存分に万葉大和路に思いを馳せることが出来る 素敵な写真歌集。当時とは文化もことばも違うけれど、雄大な自然は大きくは変わっていないと思いたい。歌の情景を切り取ったような写真に添えられた万葉歌を読み、古人の心象風景を垣間見ることができた。この雄大な自然に囲まれて生きた人々の心の思いを託した言霊だからこそ、万葉歌、特に初期万葉は力強く、そしてどこか神々しく感じるのだなと思った。2021/02/27
井月 奎(いづき けい)
42
千歳のときを経た歌を写真で表現する。これほどの難しいことを入江泰吉は実に丁寧な仕事で実現しています。飛鳥のいにしえ人の息吹を感じる土地、山の辺の道のなにか神々のおいでになるようなうごめくような、それでいて静かな様子がしみじみと胸に染み入ります。万葉歌に現代語訳がそえられているのも親切でいいですねえ。いや、これはたまらない一冊です。2022/04/10
クラムボン
8
大和路を歌った万葉集の一首ごとに入江泰吉の写真が添えられています。 飛鳥・藤原から泊瀬・吉野に至り、山の辺の道を巡って最後は平城京に辿り着く。それでは終わらず、万葉の花の歌が末尾を飾る。改めて思うのは天皇の国褒(ほ)めの堂々たる歌いっぷり。宮廷歌人が天皇に成り代り歌う、言祝(ことほ)ぎや哀悼の歌。言霊が為す力を微塵も疑っていません。そして入江泰吉の写真はそれらを優しく包み込む。特に仄かに輝く月夜の景は一編の絵画です。2021/03/28