内容説明
90年前に存在した理想の住宅。知られることのなかった名建築「聴竹居」は、なぜ発見され、重要文化財指定されたのか―。建築家、藤井厚二の代表作にして最後の自邸、京都・大山崎にある木造モダニズム建築「聴竹居」。その発見と再生の歩みを綴った1冊。
目次
グラビア 聴竹居の四季とディテール
第1章 木造モダニズム建築の傑作「聴竹居」とは
第2章 藤井厚二の生涯と「日本の住宅」という思想
第3章 阪神・淡路大震災が契機に
第4章 藤井厚二と竹中工務店
第5章 建築を社会に拓く
第6章 これからの聴竹居、これからの建築
「聴竹居」に関する調査研究、広報、「聴竹居」での主な講演及び保存公開 活動年表
著者等紹介
松隈章[マツクマアキラ]
1957年生まれ。株式会社竹中工務店設計本部・副部長、ギャラリーA4(エークワッド)企画・マネージャー、一般社団法人聴竹居倶楽部・代表理事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かっぱ
32
見学前に読了することができました。大山崎町の「聴竹居」は建築関連の本の中では紹介されていることがありましたが、一般市民レベルにまで知られるようになったのは著者の松隈章さんたちの活動があったからこそだと言えます。木造モダニズム建築の傑作を遺すために、個人の所有物から企業(竹中工務店)の所有物として万全の体制を取った上で重要文化財の指定を受けるなどし、その後も定期的な見学会やイベントを行うなどの地道な活動の結果がいまに繋がっていることが分かります。天皇皇后両陛下が「聴竹居」を観たいと行幸された話は驚きです。2018/07/16
紫羊
28
読友さんのレビューで初めてその存在を知った。忘れられ失われゆく運命にあった木造モダニズム建築の傑作「聴竹居」が、様々な偶然の重なりによって再生される過程が熱く語られている。ぜひ見学に行きたい。2018/08/04
A.T
27
驚いた。2017年国の重要文化財に指定された 京都府大山崎町の築80年の日本初の環境工学の家「聴竹居」が、1995年頃まで地元民も知らない無名の存在だった…。著者松隈章さんが阪神淡路大震災を機に古い建築を残す活動をたった1人で始めたのが縁の始まり。文化財としての面白みもあるが、この方の人を動かす力、説得力がいかに素晴らしいのか。専門外でもドキュメントとして大変面白く読めた。2020/10/11
A.T
18
5年ぶりの再読。ついに木造家屋にして重要文化財認定の聴竹居へ行く手筈が整ったのでの復習かねて。一見、築90年の古いだけの民家が、実は地熱利用による温度管理を目指した工学的な仕組みを組み入れた、独自開発の実験住宅であった。阪神淡路大震災の後、文化遺産の建築物を再建する動きが社会的にも認められるようになったことで、偶然注目されるようになり…なんと、当時の天皇皇后両陛下が行幸する運びにもなったという。近くには千利休「寺庵」、「アサヒビール大山崎山荘美術館」も徒歩圏内。京都文化の奥深さを改めて知る。2025/05/14
ムカルナス
8
阪神大震災で当時西宮にあった芝川邸が損壊し著者が勤務する竹中工務店に相談が持ちかけられることから物語は始まる。邸宅は明治村に移築されることになるが、その設計者・武田五一が京都帝大に招聘したのが当時竹中社員だった藤井厚二であり、その作品「聴竹居」に惹かれた著者は保存・再生を手がけることになる。その縁で藤井の他の作品・八木邸をも発見し保存・公開へ。ゼネコンといえば大都市でスクラップ&ビルドを繰り返しているイメージだが震災をきっかけに日本の建築文化と向き合い保存・活用していく同社の姿勢は素晴らしい。2023/12/20