内容説明
自分の住んでいる世界に、絶対はない。自分の価値観にも、絶対はない。人間の弱さやもろさ、不条理さを描く、別役実の傑作童話が装い新たに復刊!教科書にのっているお話「空中ブランコのりのキキ」を収録!
著者等紹介
別役実[ベツヤクミノル]
昭和12年旧満州生まれ。早稲田大学政経学部中退。「諸国を遍歴する二人の騎士の物語」で読売文学賞受賞。ほかに読売演劇大賞芸術栄誉賞など受賞
浅野みどり[アサノミドリ]
女子美術短期大学、セツ・モードセミナー卒業。MJイラストレーションズ13期生。グラフィックデザイナーとして広告制作会社在職後、渡英。帰国後、さまざまなデザインを手がける中でイラストレーターを志す。現在フリーランスとして活動中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mocha
100
表題作を含む短編3作と長編『黒い郵便船』を所収。いずれも数十年前に書かれたもので、童話という体裁ながら幻想的、哲学的なお話。“知”を欲することは“死”に近づくこと。4作ともに無常観が漂っているように思う。長編は特に気難しい物語だった。カタカナ語はすべて平仮名にされ、ロロ、ツツ、テテ、トト…など多勢の登場人物にこんがらがってしまう。吉田篤弘さんの『パロール・ジュレと魔法の冒険』と共通するものを感じた。どちらも充分読みこなせなかった悔しさもありつつ、とても惹かれる世界だ。2017/10/20
アマニョッキ
44
「夕日を見るX氏」のみ、はるか昔に読んだ記憶あり。有名な「空中ブランコのりのキキ」は初読です。幸せと悲しみはいつも背中合わせ。やっぱり別役さんは日本の才能でしかない。関係ないけれど、スチャダラパーは別役実さんが大好きで、一時期すごく意識しながらリリックを綴っていたそう。ワイルドファンシーアライアンスらへん。なんかすごくわかる!!「ヒマの過ごし方」は本当に名曲。スチャダラパーも日本の才能。すんばらしい。2020/09/06
へくとぱすかる
39
別役さんの童話は、いつも不思議さに包まれている。雰囲気のちがいは、おそらく論理のちがいなのだろう。普通はこうは考えないであろう、ややずれた考え方。それが通用するのは、陳腐な表現だが、「幻想」の世界だという気がする。「街と飛行船」をはじめ、ややレトロな、どこの国とも町とも思えない、メルヘンのためだけに設定されたような町。長編の「黒い郵便船」は、街そのものの成り立ちの謎を解くストーリー。社会的告発ともいえる事実と、民俗学的要素が結びつき、作者のしかける論理のずれのせいか、かなり怖さを感じる物語になっている。2015/01/18
Aaa
28
学校の授業で、学習した。この本を通して、「好きなことは命をかけてまで実行するものなのか」ということを考えた。その結果、個人的には命をかけてまでは実行しないでも良いと思った。なぜなら、命はなくなってしまったらそれ以上自分を高めることもできず、周りの人も悲しませてしまうからだ。だから、私は改めて命を大切にして行きていきたいと思った。2020/07/27
katsubek
24
教科書掲載の物語。復刊であっても復刻ではないのだろう。ともあれ、「黒い郵便船」の不思議な世界は楽しめる。海、港、夕日といった言葉で繋がってゆく物語たち。「白い大きな鳥」は何であったのかという謎は、ますます深まって、それ故にこそ、読む者を魅了する。そしてここに、「白」と「黒」という対立軸が見つかり、いよいよ興味は深まりゆく。キキやロロという名付けも、その意味合いのルーツを探りたくなる。2018/06/10