内容説明
オーストリアの王子・ペーターの誘拐事件と、命をかけた決闘のゆくえは…?!ハイラムの冒険は、まだまだ終わらない!追って・追われて・大脱走!大切な人は、この手で守る―!!ギャリコの長篇デビュー作、待望の新訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆかっぴ
5
大戦前の重苦しい空気が漂うヨーロッパの情勢が迫り、特にベルリンの章はハラハラドキドキ。アルプスの尾根を滑り降りてイタリアを目指すなんて無茶をするハイラム一行に驚いたりと、子供向けらしい冒険物語のようでもあるけれど、大人にも読み応え十分です。2015/11/28
熊猫
3
どんな窮地に陥っても前を向いているホリデー氏はいかにも児童書の主人公。 でもホリデー氏を助ける女性との関係を見ると、これ大人が読む物語じゃないかと思う。当時のいい女が出てきて、泣ける。 全体的に第二次世界大戦前のヨーロッパの緊迫した空気がひしひしと伝わってくる。ちょっとしたエピの端々にもこの先を暗示させるこのがあって重い。 小説の形式的には今ひとつなんだけど、それもまた不安を煽るんだよね。しんどい本だった。2014/09/07
timeturner
3
いやもう、後半に来てハイラムさん、007かと思うような超人的な活躍ぶり。ドイツは卑劣な悪党、アメリカは崇高な騎士という単純な図式も、書かれたのが1939年と思えば納得がいく。2014/08/07
芙由
2
ギャリコ=大人の童話のイメージに違わず、これも大人の冒険小説。ベルリンの章は秀逸だと思ったけど、これこそ大人の物語でした。そして時代背景をとらえた世界観がすごい。あちこちにヨーロッパの重みが見える。それは戦争を控えた暗さであり、同時にこれまで積み重なってきた歴史の厚みでもある。オーストリア人の男爵の言葉は特に響いた。少し読みにくいけど、全体的に勢いがあって熱い小説でした。後期の作品よりもギャリコの息遣いがそのまま伝わってくる、いい意味であらっぽい作品でした。2014/11/19
Fumie Ono
2
大戦前夜、1938〜39年のヨーロッパ。ニューヨークの新聞社で14年間校正係を務める、40歳間近の風采の上がらない小太りのハイラム・ホリデーはイギリスへ向かう。ロンドン、パリ、チェコ、プラハ、ベルリン、ウィーン、ローマと暮らしながら、ヨーロッパの緊迫した空気、暗い影におおわれる都市、恐怖におびえる人々の心情を描く。なかでも「水晶の夜」と思われるベルリンのユダヤ人商店街やシナゴーグの襲撃、破壊に及ぶ記述は胸が痛い。冒険譚の形をとりながら、この小説が1939年にリアルタイムで刊行されたことに驚く。2014/08/16