出版社内容情報
貧困、暴力、搾取、死。
自らを「宇宙人」と呼ぶ男の人生は、はたして“絶望”なのか――。
木原音瀬が挑む新境地。
漫画家・平庫ワカ氏によるカバーイラストにも注目!
「ジブンは地球の人間じゃない。早く宇宙の星に帰りたい」
自称「宇宙人」の男・ムラは、ドヤ街でホームレス生活を送っていた。空腹に耐え、過酷な日雇い労働をし、ある時には金をだまし取られながらも淡々と日々を過ごすなかで、ひとりの芸術家の青年に出会う。そんなある日、「星」にいるはずの父親の遺体が解体現場から発見される――。
【著者プロフィール】
木原音瀬 このはら・なりせ
高知県出身。1995年『眠る兎』でデビュー。『美しいこと』『箱の中』をはじめとするボーイズラブ作品を多数発表。ほかの著書に『ラブセメタリー』『罪の名前』『コゴロシムラ』「捜し物屋まやま」シリーズ、「吸血鬼と愉快な仲間たち」シリーズなどがある。
内容説明
自称「宇宙人」の男・ムラは、ドヤ街でホームレス生活を送っていた。空腹に耐え、過酷な日雇い労働をし、ある時には金をだまし取られながらも淡々と日々を過ごすなかで、ひとりの芸術家の青年に出会う。そんなある日、「星」にいるはずの父親の遺体が解体現場から発見される―。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナミのママ
75
カバーを外すとイラストがあらわれる、主人公のムラだ。木原音瀬さん新境地との作品、最初から最後まで救いがなく沼地に引きずり込まれる、絶望しかない世界だった。42歳、おそらく知的障害を抱えているだろうムラは路上生活と日雇いの繰り返し。早口も長い会話も難しい事も理解できないから「はい」と答える。彼にとって周囲は地球人、自分は宇宙人、そうやって身を守って生きてきたのだろう。個人的に、仕事で関わった何人もの人の顔が重なり辛い読書となった。ムラのような人は現実社会にもいる。2024/10/19
Tαkαo Sαito
33
表紙買いした作品だけど、終始読むのがしんどかった。とても読みやすいのだけれど、これは読みきれる人をくっきりと分ける作品だなと。最後はそういう終わり方か、とさらに辛い終わり方に。読み終わってから、こんな人本当にいるのかと思っていたが、自分たちの世界が全てではないし正しいとも限らない上で、表に現れないだけでたくさん生きているのかもしれない2024/10/14
糸巻
29
42歳のムラはドヤ街のホームレス。突然姿を消した父親の言いつけを守って日雇いの仕事をしながら生きている。純粋で無垢なムラは難しい言葉がわからない。そこに付け込まれて金をだまし取られたりする。…最初から最後までしんどい。ホームレス生活も貧困も日雇いの仕事もしんどいし、ムラ(や、ムラの母親)のような人から搾取し続ける人間の悪意もしんどい。アーティストのカンさんとの束の間の幸せで上げておいてあの結末。難しいこと怒られることが嫌いなムラだから、絶望もわからないのかも。2024/10/14
練りようかん
21
自分は宇宙人だから人間のことはわからないと思う主人公。その日暮らしで彼の思考の殆どは身体感覚と父の言葉で出来ており、本当に宇宙人のような気がしてくる。この“ような気がする”が変容する、物語から受けるものが興味深かった。父の死を認めない思い込みのモトを知りたい、通報されて血だらけなのに全く被害意識がなくて不安、と引き込む力が半端なかった。特に考えたくないことを上手く処理できず頭を打ち付けるのが苦しかった。芸術家の青年と離ればなれになる確信に抗えず、ラス前で虚無状態に。複雑な余韻が良かった。2025/04/17
しましまこ
15
容赦なさすぎて恐ろしい。2024/10/14