内容説明
限定150部の幻の豪華本『マルメロ草紙』を新たな装いで刊行。二十世紀初頭の巴里を豪華絢爛に蘇らせた傑作耽美小説!時は二十世紀初頭の巴里。ブーローニュの森近くの瀟洒な屋敷で暮らす大実業家エミール・ボナストリューと慎ましやかな夫人のシャルロット。その妹で、貞淑な姉とは対照的な生き方を求め、華やかなパリで女優を目指すナディーヌ。アールデコ様式全盛の時代、煌めきに満ちた女性たちの甘酸っぱく、香気に満ちた物語。
著者等紹介
橋本治[ハシモトオサム]
1948年東京都生まれ。東京大学文学部国文学科卒業。77年「桃尻娘」が小説現代新人賞佳作入選。96年『宗教なんかこわくない!』で新潮学芸賞、2002年『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』で小林秀雄賞、05年『蝶のゆくえ』で柴田錬三郎賞、08年『双調 平家物語』で毎日出版文化賞、18年『草薙の剣』で野間文芸賞受賞。2019年1月29日逝去。享年七〇
岡田嘉夫[オカダヨシオ]
1934年兵庫県生まれ。岩田専太郎に師事。グラフィックデザイナーとして活躍後、画家としての活動を本格的に始める。73年講談社出版文化賞受賞。田辺聖子との共著『絵草紙源氏物語』や橋本治との共著「歌舞伎絵巻シリーズ」等古典から現代文学まで数多くの挿絵、装画を手掛けた。2021年1月31日逝去。享年八六(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
216
橋本 治は、学生時代からずっと読み続けている作家でした。2013年限定150部で刊行された幻の豪華本だったため、未読の本作を初めて読みました。 廿世紀初頭巴里社交界の耽美恋愛譚、著者はこんな小説も書いていたんですね。本書でマルメロが西洋花梨であることを知りました。 https://www.homesha.co.jp/products/items/isbn-978-4-8342-5351-1/2022/01/10
くさてる
18
二十世紀初頭のパリを舞台にした恋愛絵巻。当時のフランス文学そのままの馥郁とした香りが文章からそのまま放たれているような内容だけれども、その根底にある人間心理への深い洞察と諦念にも似た正直さは現代人のものなのです。恋愛小説であるのには間違いないけれど、うっとりと酔うようなものではないはずなのに、その文章が描写するさまには酔うしかない。やっぱり橋本治はバケモノでした。2022/01/16
冬薔薇
6
性格のまるで違う姉妹シャルロットとナディーヌ、映画のような仮装舞踏会。二人の愛と恋の行方は。「シベリアの紅、不幸の紅、ヴェネチアの紅」。岡田嘉夫の絵も相変わらず素晴らしい。2022/01/24
amanon
5
大正ロマン、夢二、中原淳一、『それいゆ』の世界か…ってよう知らんけど(笑)。とにかく著者としては珍しく外国(フランス)を舞台して、多くの単語にカタカナ表記のフランス語のルビが振ってあるのが、何ともそれ(?)ぽい。他の人も述べているように、かなり耽美的な空気が濃厚なのだが、それでも終盤にスターリン独裁下の過酷な状況や、この物語の聞き手である日本人女性のシビアな現実が語られているのが、一筋縄ではいかないところ。改めて著者の才能の多彩さに恐れ入る。これが最初限定150部しか出なかったのは惜しい。隠れた佳作。2023/03/04
空飛び猫
4
恋が狂わせた歯車 知ること、の恐ろしさ 甘美な毒を舐めるかのような2022/01/08