出版社内容情報
「このエッセイでは、ともすると過剰に心配してしまうことになりがちな子育て中の人の気持ちが少しでも楽になってほしいという願いを込めて書きました」(東直子)。歌人・東直子が、月刊誌「母の友」で6年間にわたり綴った人気連載「母の風景」が待望の単行本化。子育てはもっと自由であっていい。先人たちの詩や短歌ともに綴られる歌人の言葉から、文学としての“親子の風景”が見えてくる。塩川いづみの絵を2色カラーでふんだんに収録。巻末には作家・山崎ナオコーラとの子育て対談も。
内容説明
歌人が綴る子育てエッセイ。
目次
あなたが小さかったとき
探していたもの
大丈夫
嫌なことも、うれしいことも
泣く子の理由
雨の中の時間
ちいさな手、みつけた
昼寝の至福
歯の話
ひろいもの〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ikutan
65
東さんが、ご自分の子育てを振り返って、あるいは先達の子育てについて書かれた物を掘り起こしながら書かれたエッセイ。同世代なので、そうだったなぁと共感すること多し。当時は夢中で、悩んだり後悔したりの毎日だったけれど、あとから振り返れば貴重な時間だったと気付かせてくれる内容で、思わず胸が熱くなってしまった。更に、現代社会の中で子供を育てる大変さにも触れ、子育て中の若い世代への応援メッセージも。肩の力が抜ける素敵な内容なので、子育て中の多くの方に読んでもらいたいな。先ずは4歳の男の子を育てている娘に贈ろうと思う。2022/08/07
よこたん
39
“長い人生からすると、とても短い期間なのに、育児の最中は、永遠に続くしんどい時間のように感じることもあった。必ず終わってしまう時間なんだよ、もっと楽しみなさいよ、とあのときの若い自分に耳打ちしたい。” 過ぎ去ってしまったからわかることもある。真っ只中にいたときは、ただただ必死で毎日をおくっていた。子ができたからといって、自動的に親はできあがってはこない。子は親に育てられ、子に親は育てられる。一緒に笑ったり泣いたり、ふくれっ面になったりしたことを、子はどれくらい覚えてくれているのだろう。懐かしさが匂った。2022/07/15
みっこ
31
たくさんの短歌や詩が散りばめられた優しい文章。俵万智さんの子育てエッセイを思い出します。東さん、子育てされていた頃に投稿した文章や短歌がデビューのきっかけとは、びっくりです。私は働くお母さんが主流の時代で子育てしてるけど、専業主婦が主流の時代だったらどんな感じだったのかなと思いを馳せてしまいました。《子どもは天からの授かりもの。親の所有物ではなくて、どの家庭に来たとしても社会の中で育てて、社会に無事に送り出すのが大人の務め》という言葉が素敵。2022/10/24
羽
24
福音館書店の月刊誌『母の友』に連載されていた東直子さんのエッセイをまとめた本。子育てをされていた頃の思い出が、あふれんばかりに綴られています。親がこどもと四六時中一緒にいられる時間は限られていて、長い人生からするとほんの一瞬のこと。こどもはあっという間に大きくなり、親の手をはなれてしまいます。時間を巻き戻すことはできない。だから、生まれたら一緒に過ごす時間を大切にしよう、めいいっぱいそばにいて、あそんであげよう。子育て真っ最中の方、子育てにちょっと疲れちゃったなって方にもおすすめです。2022/08/04
koke
13
短歌からの連想でとがった視点を期待していたが、子どもがすでに成人していることもあり、普通の良識ある育児エッセイだった。育児はつらく悩み多いものだからこそ、楽しむことを意識してと呼びかける。作者は歌を詠むことで社会とつながり、子どもとともに家に縛られる閉塞感を脱したようだが、それも育児を楽しむために育児からの一時避難所を作ったということだろう。2023/07/31