内容説明
『スーホの白い馬』で知られる絵本画家・赤羽末吉。日本初の国際アンデルセン賞画家賞に輝いた画家はどのように誕生したのか。東京下町に育った子ども時代から青年期に渡った旧満州(現中国東北部)での生活、戦後の引き揚げによる数々の試練、そして絵本画家となり子どもたちのために描き続けたその軌跡を、三男の妻である著者が、義父への深い思いとともに語り尽くす。―ひとりの絵本画家、そしてその家族のものがたり。
目次
プロローグ―出会い
第1部 誕生―絵本画家の種と芽吹き
第2部 大陸
第3部 敗戦
第4部 絵本画家への道
第5部 絵本に思いを込めて
第6部 死
著者等紹介
赤羽茂乃[アカバシゲノ]
1952年、東京に生まれる。1979年、絵本画家赤羽末吉の三男研三と結婚。住まいを近くし頻繁に行き来しながら、義父赤羽末吉の日々の暮らしに触れる。1990年、赤羽末吉他界後は、夫研三とともに遺された原画やフィルム、スケッチなどの整理に携わりながら、絵本画家が辿った軌跡とその作品について調査を重ねる。現在、赤羽末吉研究の第一人者として、その生涯と作品の魅力を多くの人々に伝えるため、各地で精力的に講演活動をおこなっている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ツキノ
22
かなり時間をかけて読了。赤羽末吉作品に惹かれるわけがわかった。食卓での語り口もそのままに、愛情をこめて書かれている。末吉が必死で家族も巻き込んで満州から持ち帰ってきた写真や戦後40年以上毎日つけていた手帳などの資料をふんだんに使い、切り抜きとしての残っている雑誌記事や絵本論からの転載、のちに、中国への父の旅をたどる取材もしているという徹底さ。過去を語る時、著者自身が見聞きした、関連人物の後日談とともに書かれているのもいい。堅苦しさがなく読みやすい。索引がないので自分で作ってみたい。2020/11/26
絵本専門士 おはなし会 芽ぶっく
10
著者の赤羽茂乃さんは3男の妻。絵本でのデビュー作『かさじぞう』 https://bookmeter.com/books/403649 や『スーホの白い馬』 https://bookmeter.com/books/530619 のエピソードやお人柄が伝わります。2023/09/17
タンタン
7
赤羽末吉の評伝。戦前の生まれから満州時代のこと、戦後の仕事について。絵本の内容については少なめで、人となりについて詳細に語られている。作品に向き合う真摯な姿勢が感じられ、あらためて赤羽末吉の絵本をしっかり読み直したいと思った。2024/12/25
吉日なり
3
なかなか厚さのある本。誰でも知っている「スーホの白い馬」の絵本画家赤羽末吉の生涯を息子の嫁が見事に書ききっている。アンデルセン賞を日本人で初めて獲った方だと初めて知りました。旧満洲からの引き揚げの物語はいろんな作家が書いているが、情けや非情に翻弄されながら家族で帰ろうとする者たちの懸命さ、偶然の重なりを感じて心動かされる。それがここにもあった。2020/08/18
いくさむ
2
赤羽末吉の名前もスーホの絵本のことも知らなかったが、なぜか本の題名と装丁の絵に強くひきつけられ、この分厚い本を手に取った。一人の絵本作家の生涯についてこれだけ膨大な資料をまとめあげることは並大抵の作業ではなかっただろう。著者の茂乃さんの義父に対する深い愛情のおかげでこの絵本作家を知ることができた。本当にありがたい。感銘を受けるところは沢山あったが1つだけ。庭を花でいっぱいにし、その中で子供たちを遊ばせる。子供はそのときは何とも思わないが美しい花々は必ず心に作用して未来に繋がっていく、ということ。2021/01/23