内容説明
安房直子の代表作のひとつの文庫化。鹿撃ちの名人、清十さんの三人の娘たちはそれぞれ、牡鹿に連れられ、山中のにぎやかな鹿の市へと迷いこむ。鹿は、娘たちの振舞いに、あることを見定めようとしているようなのだが…。末娘みゆきと牡鹿との、“運命のひと”を想うせつなさあふれる物語。
著者等紹介
安房直子[アワナオコ]
1943年、東京生れ。日本女子大学国文科卒業。大学在学中より山室静氏に師事する。70年「さんしょっ子」で日本児童文学者協会新人賞、73年に『風と木の歌』で小学館文学賞のほか、その後も野間児童文芸賞、新美南吉児童文学賞など受賞多数。93年逝去
スズキコージ[スズキコージ]
1948年、静岡は遠州生れ。68年に新宿歌舞伎町の路上にて初個展、71年に個展「コージズキンの世界」を開催する。87年『エンソくんきしゃにのる』で小学館絵画賞のほか、その後も講談社出版文化賞絵本賞など受賞多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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(C17H26O4)
77
鹿の市のほたる色をしたあかりのなんて奇麗なこと。笛や鈴の音や、笑い声やさざめきが聞こえてくれば自然と心は浮き立ち、店に並ぶ品々をながめればときめいて、その魅力に抗うことなんてきっとできない。鹿が見せる特別な市と分かっていても。かなしみの気配がそこここに感じられたとしても。猟師の清十や上の2人の娘を誰が責められよう。末の娘を誰が引き止められよう。天を走る鹿のかたちをした雲を見た清十の気持ちはいかばかりか。ただただかなしく美しい朝の空。「おう、おう」清十の声にならない声。2019/06/08
R子
13
とても良かった。安房さんの紡ぐ豊かな言葉が、美しい景色や哀切の気持ちを胸に呼び起こす。3姉妹が同じ道を辿ろうとする展開は昔話の形式を思わせるが、1人1人にはなれ山との行き来のドラマがあり安房直子ワールドを感じた。最後は娘の幸福感と清十の不安が相俟って何とも言えない、でもこれしかないと思えるものだった。2018/07/11
りるふぃー
12
古今東西ファンタジーは数あれど、大人の私には うまく世界に入れないで 途中で断念してしまうものもある。けれど 安房さんの作品は やはり私には特別。純和風の昔話ふうの物語だから 地味になりがちだけど、安房さんの手にかかると 美しく深淵なおとぎ話に。2017/10/21
菜生
9
八咫烏シリーズ著者の阿部氏が影響を受けたファンタジーと言われてたので、読んでみました。なるほど、小学校中級からの本なのね。以前どこかで紹介されたらしく、その紹介文が巻末に貼り付けてありました。(図書館本なので)そのおかげで読む前から内容は大体把握できた感じです。でも読み終えても肝心の天の鹿が何だったのか、ふんわりしたままで掴めなかった。だけど言葉の表現は美しく、不思議と魅せられました。私の子供が大きくなったら薦めたいな。2020/08/29
頼ちゃん
6
美しくて、寂しくて、不思議なお話でした。2020/11/28
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