内容説明
唐招提寺の金堂を守る4人の“すみ鬼”のうち、一人の顔だけが違っているのはなぜ?今から300年前の元禄時代、大工見習いの少年が“すみ鬼”と出会ったことからはじまる物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よこたん
48
“「ヤス、わしらも 行くとするか」鬼は ヤスの前に、かがんで背中を出した。ヤスは ふっと、父の背中を 思い出した。” 気の遠くなる程の年月を、唐招提寺の屋根を支え続けるすみ鬼の願いが、なんとも鬼らしくて頬が緩む。祖国を離れここに縛られた鬼のさみしさと、父を喪った少年ヤスの気負いに隠れるさみしさとが呼応しあった出会い。恐ろしいながらも賑やかで楽しげな吉野の山奥の鬼たちの宴にゾクゾクする。脱走はしたけれど、戻るつもりだったんだねと思いたい。取り押されられる寸前に、鬼がヤスに言いかけた言葉は何だったのだろうか。2020/02/04
Smileえっちゃん
45
唐招提寺の四隅を支えている鬼のひとりが笑っているそうな・・・宮大工を目出す青年と渡った渡った鬼と、日本の鬼の勝負。あとがきから・・・すみ鬼のにモデルは、唐招提寺の四隅の木彫りの邪鬼。屋根の下で人目に触れず、小さな体で正座して、必死に支えている姿を見て「何とかこの鬼を逃がしたい」という気持ちで生まれたお話とか…何度か唐招提寺に行っているのに見ていない。改めて探してみたい。見つかるかな?一尺(30センチ)程。2023/02/23
chiaki
34
節分に合わせた紹介予定本。奈良唐招提寺の金堂の屋根を支える「すみ鬼」のおはなし。その四隅の邪鬼は一体だけが違う表情をしているそうで、そこから生まれたおはなしとのこと。寺の大規模な修理のため、宮大工の見習いとしてやってきたヤス。ある日、唐の国からやってきて九百年もの間、お堂の隅で疫病や魔物からお堂を守り続けてきたすみ鬼の泣き声を聞く。そんなすみ鬼の頼み事とは?「おまえたち人間に見えているのは、この世の半分。残りの半分は、わしらのものだ。」闇から目を背けず、真実を見極める力を持たなければ。すみ鬼探したくなる。2020/01/19
gtn
29
九百年我慢して手に入れた掛け替えのない自由を、少年に差し出した鬼。だが、永遠の絆を二人が手に入れたことで相殺。生涯の幸福は、刹那の縁で決まる。その縁を逃してはならない。2023/04/16
ひお
21
第56回 課題図書の一冊。高学年向けなのに絵本とは・・・と思いつつも読んでみたらびっくり結構きっちりとした話で面白い。鬼にも心はあり、ただ怖いだけの存在でもなく願いや、思いがある。念願成就の末に再度囚われて封じられてもそこには苦悶の顔じゃなく何とも穏やかな笑みが・・・。双眼鏡もって唐招提寺行きたくなった。2010/05/25
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