内容説明
「すこし神さまになりかけて」いるひとたちと楽しみ、また悲しんで、宇宙のはからいを知る幼い「みっちん」の四季。『苦海浄土』で、水俣病によって露になった現代社会の病理を描破した著者が、有機水銀に侵され失われてしまった故郷のむかしを綴る。個人的な体験を超え、子どもたちの前にさしだされた、自然と人間の復権の書。
著者等紹介
石牟礼道子[イシムレミチコ]
1927年、熊本県天草生れ。生後3ヶ月で水俣に移る。水俣実務学校を卒業後、16歳で代用教員として小学校に勤務し、18歳で終戦を迎え、退職。主婦をしながら歌作を発表し、1954年に知り合った詩人、谷川雁の「サークル村」に参加するころから散文も発表しだす。水俣病発生以来、10年以上の歳月をかけ、1969年『苦海浄土』を発表。のち『天の魚』、『流民の都』など文筆での告発とともに、患者の支援をつづけてきた。2002年以降は、新作能「不知火」の上演でも話題をよんでいる。マグサイサイ賞、朝日賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
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シュシュ
28
幼子みっちんと、みっちんの祖母でめくらさまである『おもかさま』、火葬場の隠亡の『岩殿』、片足の『仙造やん』、乞食さんの『ヒロム兄やん』『犬の仔せっちゃん』『ぽんぽんしゃら殿』の話。自然の描写がとても美しく、魂の世界のような見えないものを感じるファンタジーでもあった。社会の中で弱い立場の人を慈しむ気持ちが伝わってくる。 『犬の仔せっちゃん』に石を投げる男の子たちに立ち向かっていくみっちん。不条理な運命に対して、神様に怒るみっちんでもあった。みっちんは、苦海浄土の石牟礼さんなんだなと思った。2016/07/29
algon
19
著者「みっちんの声」の中で池澤夏樹は落ち込んでいたとはいえ「私の書くものは「あやとりの記」の1章、「苦界浄土」の2ページにも及ばない」とまで言った。・・で読んでみた。納得した。なるほど、特に最終章はファンタジー的に漂浪く(されく)魂を表現して白眉、池澤の述懐にうなづける出来と思った。子供向けの雑誌連載作だが「椿の海の記」の舞台設定そのままで面白く読んだ。5歳のみっちんと田舎社会からも外れ気味の人々との交流を描く。草叢に立つみっちんは不思議おもろい子。「苦界浄土」が壁になっていて埋もれていくには惜しい秀作。2022/02/01
慧の本箱
15
「椿の海の記」に続いて手にした石牟礼道子氏の本書。幼かったころの著者の日常のなか、彼方と此方の狭間を行き来する夢うつつの様な時が綴られています。2024/10/11
勝浩1958
8
本の裏側に「小学校上級以上」と表示されていたのですが、このぎすぎすとした嫌な雰囲気が蔓延した日本社会で生活しているわれわれ大人が読んだほうが良いでしょう。読後感は、例えは変ですが、脂っこいものを食べた後にお漬物で口中をさっぱりさせた感じでしょうか。この著作は自然と人の共生が見事に描かれています。私が小学生の頃は、まだここに描かれているような自然やコミュニティが少しは残っていたように想います。いまはもう望むべくもないでしょう。淋しいかぎりです。2014/07/02
yuki
7
石牟礼さんに惹かれて作品を読み進めています。社会の底辺で互いに敬意をもって生きる人々の姿を少女の目を通じて描かれる童話でした。私たちが忘れてしまった自然への畏怖や人間への思いやりに気づかされました。そんな石牟礼さんだからこそ水俣の人々を描ききることができたということがわかります。2018/12/13
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